2015年4月11日

安定したポスドク職は可能か?

Natureにポスドク問題について興味深い記事が掲載されていている。たくさんのコメントもある。

記事では、ポスドク問題の深刻さ・難しさに触れつつ、新しい試み・動きがいくつか紹介されている。「ポスドク」を、特別な人材のための特別な職、として扱い、独立にこだわっていない(できない)人たちにはstaff scientists(テクニシャンではない、けどプロジェクトを任せられ、職としての安定性もある職?)の道を開いていくのが良いのでは?という展開。

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以下、自分の意見を。

staff scientists、聞こえは良いけど、リソースの問題があるので、いろんな方法を試しつつ、とにかく需要に見合った数に時間をかけて減らさないとダメ。つまり、このご時世「安定したポスドク職は可能か?」という問いにYesと答えるのは極めて難しい。

まず、staff scientistsという職について。
聞こえは良いけど、やっぱりお金が第一かつ最大の難関。
例えば、契約期間3~5年だったものをパーマネントにするなら、金銭的にその5~10倍のコミットメントは必要なはず。

財源は?競争的外部資金?大学なり研究所?別のところにシワ寄せ?

これは、リソースの問題だから、特別に財源を確保しないと、グラント採択率・アカポス数減につながり、ヘタすると今の状況がさらに悪くなる。(その意味で、システムとして破綻している、という意見には100%賛成)

ただ、すでにアカポスに就いている人たちでパフォーマンスの悪い人たちをstaff scientistsに格下げできたりできるなら、財源も少し確保可能。あって良いオプションだと思う。ムリだろうけど。。。

ということで、staff scientistsという職、聞こえは良いけど、実際どう実現させるか非常に難しいし、staff scientistsになれる人自体が「特別な人材」なのでは?という気がする。

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問題の根本に戻って、ポスドクの数が問題なら、ポスドクの数をとにかく減らすしかない。

が、この記事にあるニュージーランドのように一気にバブルをはじけさせハードランディングさせると、そのインパクトは大きい。loose-looseのディール。だから、ソフトランディングさせた方が良い。

おそらくこの問題が発生したのと同じ時間スパンで解決させないといけない。

そのために個人レベルでできることは、PhD、ポスドクへのハードルを上げ、必要な時は別のキャリアをすすめるシグナルを送ることなんだろう。

例えば、PhD学生を採るのは毎年ではなく数年に一人のペースで、有望と思える人材だけに絞る。ポスドクは、ポストがあるからとりあえず埋めるというより、ホントに良い人材が見つかるまで埋めない、といった待ちが良いのだろう。みんな同じ戦略を取り始めれば、各ラボの生産性はそこまで下げず(むしろ上がるかもしれない)、PhD・ポスドク問題の解決に貢献できるかもしれない。ホンの少し。

そして、有望と思って一緒に働き始め、実はちょっと違った、という場合は、できるだけ早く正直なフィードバックを与えてあげるのがホントは良いのだろう(言うは易しだが・・・)

一方、当事者だったり、これから当事者になるであろう、もしかしたらなるかもしれない人で、将来アカポスに就きたい場合、どうするか?

とにかく自分のフィットネスを高め、ニッチを探し当てる努力をできるだけ早く始めるしかない。そして、自分で「向いてないかも?」と不安に思ったら、自分で悩みつつも、自分の上司に一度相談すると良いかもしれない。ひどい上司でない限り、その人の経験に基いてそれなりのフィードバックはくれるはず。

そのフィードバックもネガティブで、指摘された弱点の克服が非常に難しいなら、別のキャリアを考え始めた方が良い。

そんなネガティブな状況にも関わらず、いつか自分は!と信じているなら、その強い信念にしたがってとにかく戦略的にハードワークすれば良い。その信念が本物なら、ダメでも後悔はないはず。

一方、そこまでの意気込みがあって行動力もある人なら、非アカポスへの道を選んでもうまくいく(その逆も真)だろう、というのが状況をさらに難しくしている。。。

総選挙など

前回から丸3ヶ月のブランクですが、生きてます。

今、イースターホリデーシーズン中で、今週は天気も素晴らしく、すっかり春(といってもまだひんやり)です。

UKでは連日、5月の総選挙のことがニュースの中心ネタで、テレビ討論もあったりと盛り上がってます。SNP昨年の国民投票後、大躍進中で、スコットランド内の労働党の議席をことごとく奪い、議席数でいうと第三の党になりそうな勢い。(UK全体の人気ではUKIPが3番らしいけど)

個人的注目は、労働党と保守党どっちが第一党でどんな連立政権になるのか、そして、2016年のスコットランド議会選挙で次の国民投票実施への議論がどれくらい盛り上がっていくか、ということ。

先週の7党首テレビ討論で、Nicola Sturgeon は、国民投票はonce in a generationやし、と明言してたのに、今週、2016年の選挙で勝ったらまたプッシュするし、と口ばっかりです。。。

SNPは相変わらず数字に弱かったりと、しっかり政策の実現性や結果を吟味する必要がありそう。。。

でも、今回に関しては、もっとSNPにパワーを持たせて、どうなるか見てみるのは悪くないと個人的には思ってます。Liberal Democraticみたいに、選挙後サポート急落、ということもありうる。もしもしっかり仕事ができるなら、独立OK、ということにもなる。けど、経済をどう回すか、という根本的な問題はどう頑張っても限界があるように思える。。。

とにかく、選挙キャンペーンの動向を見ていると、今のUK内の問題がたくさん議論されてて非常に良い勉強になってます。

財政や経済の問題はもちろん、NHS、移民とEU、世代間格差、Tridentなど。

日本で例えたら、財政から外交や沖縄基地問題までたくさんの問題を争点にして、次を決める、という感じ?

仕事関係に話を移すと、論文が1つ出て、1つaccept、1つはin revision、1つはreject後再投稿、という状況。グラントは昨年のBBSRC以降、残ってた二つは撃沈。Co-Investigatorのプロポーザルもあっさりreject。

ということで、次のプロポーザル書き中と、相変わらずの自転車操業状態です。。新しいネタをしっかり考える、という点ではプロポーザル書きは刺激的で良いけれど、もう少しじっくりプロジェクトに取り組ませて、というのが正直なところです。。。RCUKでいうと、2~2.5プロジェクト分維持できるともう少し楽なのに、、、という感じ。

他には、今のポストに就いてぼちぼち5年目ということで、senior lecturerに昇進することになりました。「年寄り講師」?お金獲得というインプットはOK、論文というアウトプットは全然ダメダメですが、昇進できました。が、給料という点では、lecturerのままだったとしても額はおそらく変わらないと思われ、しかも「senior lecturerだから、もっとティーチングしろ、アドミン系の仕事をしろ」と要求されるリスクが高く、正直喜べません。。。

明日からエディンバラで神経科学学会。明日初日に、全5つのポスター発表となってます。