2014年3月15日

スタップ細胞仮説から何を学ぶか?

捏造といったたぐいは、どこの国だろうと起こりうる。一方、アメリカやイギリスだったら、違う展開だっただろう、と思いながら、ニュースやソーシャルメディアを毎日フォローしてます。。。

日本ならではと思った点は、やはり最初の加熱報道の異様さ。結果的には、これが今の状態につながったと思われる。良い意味でも、悪い意味でも。

良い側面は、論文発表直後から多くのpost-publication peer reviewが行われ、再現性の欠如だけでなく、論文そのものの問題が比較的短期間にわかり、自浄作用が機能したこと。これに加熱報道が一役買ったのは確かだと思う。

発表から2ヶ月足らずでretraction当確の状態にまでなった論文なんて、少なくとも僕は知らない。

もしこれが10年前だったら、、、
間違った論文を多くの人が信じ続け巨額のお金が動いたりして、物的なネガティブインパクトは相当だったはず。(RIKENはすでに人事で物的な被害を受けてるけれども。。。)

ちなみに、論文発表前に防げなかったの?と家内に聞かれたけど、現状は非常に難しい。。。

もちろん、究極的にはシニア研究者のマネージメント問題だとは思うけれど、今回は、小保方さんが一人でいろいろ手がけて、彼女のprimaryな指導教官・メンター的な人がいたか非常に曖昧な雰囲気。笹井先生の具体的な貢献はよくわからないけれど、もしもネイチャー論文書き、という最後の部分だけの積極サポートが主な貢献だったとすると、差し替えられたデータをそのまま鵜呑みにしてしまう状況に陥られたのかもしれない(あくまで想像)。

ましてや現状のpeer reviewの制度で、レフリーが図の流用に気づくのは不可能。そもそもそんな視点で論文を審査しない。

とにかく学ぶべきことは、共同研究者間peer reviewの強化。

仮に共同研究的な関係であっても、自分のラボ内でやるのと匹敵する厳しい基準で共同研究者のデータを評価しないとだめ、ということなのだろう。甘い時は甘いと言い、元データを大切にすること。そして、自分の名前が論文に載る時はその論文に責任を持つこと。(共同研究者としての関係を崩したくないから、概して甘くなりがちで、あまりうるさいと嫌われそうだが。。。)

が、今の時代、見ても理解できないような元データを出してくれる人と共同研究を進めるケースが非常に多くなっているので、そう簡単な問題ではない。

一方、悪いインパクトは、、、、ニュースを見ての通り。

RIKENブランドが非常に傷つき、BBCでも報道されてるから、日本人研究者全体の信頼低下につながったと思われる。日本国民からだけでなく、世界の科学者からも。しかも関連ニュースは今後も続く。国内外で。

さらに、今後は信頼回復のための過剰な監視制度をひくことで、生産性が低下し、欧米・中国との厳しい競争でますます劣勢な状況に置かれるおそれがある。今の過当競争の状態はひどくなることはあっても、軽減される方向に行くとは思えないから。

とにかくネガティブインパクトは絶大。

小保方さん、もちろん今回の件、ホントに不正をしたんだったら、正直に、できるだけ早くしっかり精算すべき。けど、スタップ細胞仮説を提唱した点だけにおいては、彼女の独創的な発想を非常に買いたい。普通、そんなこと思いつかない。だからみんな熱狂した。

仮にRIKENのポストや博士号を返上しても、また一から出直し、10年後くらいに、やっぱりこの人すごかった、と言われるよう頑張ってほしい。30歳なら、これから10年で復活可能。日本では風当たりが強すぎて居心地が悪かったら、別の国で頑張れば良い。サイエンスの業界はそれができる。自分の意志で。

神経科学の分野でも、ノーベル賞受賞者と一緒に出した論文を後に取り下げ、そのノーベル賞受賞者を怒らせながらも、今は超一流の研究者として活躍している人もいる。

間違いは誰でもする。
そこから何を学んでどのような行動を取るかは人次第。

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