2011年9月25日

原発のウソ


原発のウソ (扶桑社新書)

小出裕章氏による本。嫁さんが帰国中に買ってきたので読んでみた。

この本は、今年6月に出版されている。
なので、その時点での福島第一の話も盛り込まれ、原発に関わるネガティブな側面が満載されている。

センシティブなトピックなので、この本を読んだ後の感想は人によってかなり違うのではないだろうか。例えば、一方では、マスコミなどでは書かれてこなかった情報満載、と歓迎する人も大勢いるだろう。他方では、バイアスがかかりすぎていて受け入れられない、と思う人もいるだろう。この本に書かれていることをどう自分の考えに取り入れるかは、読んだ人それぞれに委ねられている。

この本の編集過程に興味があるが、少なくともこの本では、僕は後者の立場を取りたくなった。もちろん、知らなかった側面を知る・原発の最大リスクを評価するという意味ではこの本はすばらしいし、最大限支持したい。ただ、情報の伝え方は非科学的だ。

科学では、二つの対立する意見があって、その結論がわからない問題を議論する時、両者の主張をできるだけフェアに触れながら議論を展開しないといけない。特に、両極端の意見が存在する場合、それは重要になる。

が、この本ではその配慮が若干欠けている印象を持った。本を一般向けにわかりやすくするため、敢えてそういう戦略を取ったのなら、それはそれでわかる。が、僕個人としてはそのような戦略は、アンフェアで受け入れられない。

また、主張の展開に若干問題を感じる部分があった。
例えば、原発は海をあたためる、すべての原発をすぐに止めて大丈夫、といった部分に関する記載は、根拠・ロジックに飛躍があるように思った。

実際の原発事故で深刻になるのは、ガンのリスクだけでなく、心理的な側面もある。チェルノブイリの事故では、その心理的な部分が大きく現れていると聞く(それ自体がウソかどうか判断するスベを僕は持ち合わせてはいないが)。しかも、その心理的な部分は、ガンより先に現れるだろう。

この点において、この本は不要に不安・パニックをあおっている印象を持った。もしそうなら、この本は負の効果をもたらすリスクさえある、と言えなくもない。

もちろん、原発の問題は科学・非科学云々を超えた問題だと思うから、できるだけ多くの人がここに書かれている意見をできるだけ早く知る必要はある。実際事故が発生したら、最大リスクを評価しながら行動した方が良いとも思う。

が同時に、しっかりした知識を持っている人たちが、バランスの取れた議論をして、それをオープンにして欲しいとも思う。

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