格差社会―何が問題なのか (岩波新書)
たまたまタイムリーなタイミングで読んだ。
この本は、2006年に出版された橘木俊詔氏による啓蒙書。
日本における格差社会の現状と原因、そしてその将来について非常にコンパクトにまとめられている。
OECDが発表したデータなどをもとに、欧米先進国と日本を比較しながら、日本はすでにアメリカ的な「低福祉・低負担の国」だということを力説。いくつかの具体例も挙げながら、現状を改善するための政策も提案している。
この手の話、僕は全然ナイーブなので、第一章でいきなりテクニカルな話が出たときは、途中で挫折するだろうと思った。けど、もう少し読み進めてみると、マスコミでも度々話題になる諸問題にメスが入れられ、非常に興味深い議論に引き込まれ、一気に読めた。
お薦め。
あとがきにあるように、著者は
・機会の平等・不平等
・結果の平等・不平等
・効率性と公平性の関係
・政府の役割
・企業と人々の意識と行動の変化
が、格差社会を議論する上で重要だとし、これらに基づいたトピックが比較的わかりやすく扱われている。
2006年の本なので、リーマンショック後の今となっては、やや「絵に描いたモチ」的な部分もあるのかもしれないが、基本的な知識を身につける上では非常に役立った。
この本を読むと、格差社会の問題は、最適解を導き出すのが難しい問題を複数同時に扱う複雑な問題だというのがホントによくわかる。最終的に日本はどういう方向を目指すかは、政治の判断によるところが大きいのだろうけど、今もしデモをするなら、政治を動かすくらいのデモをしておかないと、数十年後、格差のさらなる拡大が顕在化してからでは手遅れなのだろう。一方で、デモをする前には、この本を読むか、それに相当する情報を得て、何が問題か絞り込んだ上で、デモのターゲットを決めた方が良いのかもしれない。とにかく、格差社会の問題は、非常に不都合な現実だと思う。
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