2015年8月8日

UK5年

先週1日をもって、グラスゴーに住み始めて丸5年経ちました。
スコティッシュ・アクセントは未だわかりませんが、それほど不自由もなく(?)暮らしてます。

今週、永住権を申請し、無事受理されれば、今後、ビザ関連で悩まされることはなくなるはず。日本を離れて10年間、ビザ関連に費やした時間、そして何よりもお金は相当な量に。。。

それはともかく、UKに5年住んで思うことをダラダラと書いてみます。

<USとUK>
USとUKはいろんな点で違う。ここでは、「自由」をテーマに。
USの自由さは非常に魅力的だけど、自由な分、リスクは大きい。いろんな点で。

一方、UKでは何となく窮屈感がある。
けど、周りの目を気にしないで良い点は、USのそれに近かったりする。

UKでの窮屈感の原因はいくつかありそう。

第一に、自分が移民、という点。
USの場合、殆どの人が数百年以内の移民ということもあってか、移民に対する感覚が違ってた。一方、UKの場合(おそらく多くの欧州の国の場合)、移民絡みのダークサイドが顕著。ここ最近のCalaisの問題はそのダークサイドの一つ。「自分も移民」ということから肩身の狭さを感じることがある。

第二の窮屈感の原因は、何かにつけ安全対策だろ、正当化だろ、すぐ言われる点。もちろん、多くのケースで筋が通ってるけれど、「自由」が軽減される分、窮屈感につながる。

第三は、移民の話とオーバーラップするけど、マイノリティー感。ロンドン(とその周辺)を除くところでは、東アジア人は非常にマイノリティー。むしろ、それが良い、と思うこともあるけれど、しばしばそのマイノリティーという点を気にすることがある。窮屈、というより疎外感的なものに近いかも。

4つ目は気候。晴れが少ない分、開放感が自然と減る。服も軽装になる機会が少ない。例えば、グラスゴーの今年の夏は、最高気温15度前後の日ばかりで、夏があったのかわからないくらい。冷夏で雨が多かった。。。冬と今の時期と、家で着てる服が変わらなかったりする。。。季節感超薄。。些細なことのようでも、無意識的な部分で作用を及ぼしてる気がする。

<歴史と文化>
歴史と文化の重み・厚みはさすが。
「スコットランド」そのものの歴史はそれほど長くないけど、イングランドを中心としたGB全体の歴史は密度が濃い。建物からもそれを感じられる。

文化に関しては、UKに住み始めて音楽を聴く機会が圧倒的に増えた。
ブリティッシュ・ミュージックのレベルの高さを改めて感じる。例えば、子供と同じ曲を楽しむ状況は、日本だったら想像できなかったかも。毎週iTunesでランキングをチェックしては、気に入った曲をたまに購入、なんて状況は想定外だった。

<政治>
USとは違うけど、レベルは高い。選挙時期は、ジェラシーを感じる。なぜなら、日本のそれとは格段に違うし、自分に選挙権はないから。
一方で、労働党がしっかり立て直してこないと、バイアスのかかった政治になって、よろしくない。何事もバランスは大事。

スコットランド独立の件、先週またホットトピックになってた。来年のスコットランド内の選挙に向けてまた盛り上がるのだろう。けど、少なくとも先5年は、国民投票はない(とキャメロンさんが保証してくれた)。

国民投票どうこうより、昨年の今頃いろいろ議論された独立国としての実装的な部分の議論が進んでいないのは、ちょっと残念。SNPはまずそういう足元を固める戦略を採るべき。

<格差>
格差はUKでも肌で感じれる。USほどでないにしろ。住む地域が格差の指標の一つになってる点はおそろしい。。

一方、日本同様、世代間格差が問題になってる。政治の問題として扱われるケースもある。非常に難しい問題。

昨今必要とされている人材のハードルの高さというか、昔の多くの職との質的な違い、そして教育の現状(つまり時代の変化についていってない)を考えると、世代内での格差はますます広がるだろうし、世代間の格差も、状況は悪くなることはあっても、良くなる状況は想像できない。経済だけでなく、気候変動の問題もあったりと、非常に大変。

ちなみに、UKと日本を比べると、人口構造のいびつさは日本のそれほどではまだない。子供がまだ生まれている。サポートする社会体制もそれなり。日本はどうなるのだろう。。。

<セキュリティ>
個人レベルのセキュリティとしては、もちろん住む場所に大きく依存するのだろうけど、非常に安全。日本のそれと大差ない、というのが過去5年間の感覚。

ヤバい人はオーラを出してるので、この点はUSに近い。銃がない分、さらに良い。ただ、女性の場合は、必ずしもそうではない。一方、「痴漢」の話は聞いたことがない。

国レベルでは、それなりの体制は整ってるようなので、突発的なテロを考えないなら、おそらく日本より安全なんだろうなぁ、という気はしている。USとの関係も、日本とUSの関係とは違って健全というか対等というか。ただ、グラスゴーのすぐ近くにトライデントがあるので、実際ドンパチが始まると、最悪の場合、グラスゴーは住めない場所になる大きなリスクはある。ドンパチより、アクシデントがもっと怖いか。。。

<科学>
まずグラント制度。
制度としての質は比較的高い。もちろん、分野外の人も評価する分、宝くじ的な余地があるけれど、ダメならダメな理由を後で教えてくれる。それなりに納得のいくロジックを教えてくれる。

ピアレビューも、論文審査のそれほどではないにしろ、しっかりやってる。そのコメントは申請者に返ってきて、研究者のレベルを高め合ってる。

申請書もそれなりに詳しくプランを練らないと書けないようになってるから、1300億の予算なのに、実は2500億もかかるような提案があっさり通ることは少ない。つまり、お金の使い方も、意思決定前にそれなりに吟味される。通っても、無駄な部分は削るよう言ってくる。実績がある点(つまり良いCV)はもちろんプラスに働くだろうけど、それだけでは決まらない。プランがどれだけ実行可能かしっかり見てくる。完璧ではないにしろ、プロフェッショナル。思うに、この制度のおかげで、GDP当たり先進国最低レベルのサポートでもUKのサイエンスが高いレベルを保ってる一因になってるのだろう。他の国も学べる点はあると思う。

UK主導で変えようとしているアカデミアの文化もある。オープンアクセス。
UK内では、この勢いはもう止まらない。問題は他国がどれくらい追従するか。雑誌の淘汰が進むだろう。

一方、大学に目を向けると、いくつか(たくさん?)問題がある。大きな問題は、伝統的な部門構造。USのように、一人のスタッフが複数の部門に所属する、ということは聞かないし、部門そのものが非常に古臭い。新しい分野が出てきたから、柔軟に新しい部門を作って、、、ということがおきない。

なぜか?

ここ数年でわかってきたことは、学内だけではなく、外部組織との関係からその硬直性が出ていそう、ということ。特に、授業のカリキュラムは、外部団体(名前は覚えてないけど)の規定に沿ってる必要があるようで、制度が非常に官僚的。特に教育に関して、イノベーションが起きにくい構造になってる。この構造上の問題がUKとUSの決定的な差につながってる。歴史が足かせになってる典型例。一方、お金がある場合は、新しい研究所を作って、そこで先端研究・企業連携を推進する、というケースもあるのはある。

<教育>
住む場所を選べば、無料でそこそこの教育を子供に受けさせられるのはありがたい。ただ、最近の記事によると、私立に通ってる人たちは良い職に就きやすい、という統計もあるようで、この辺の格差のハードルはなかなか越えられない。

<交通>
道路について。
roundaboutがすばらしい。右直事故そのもののリスクは根絶してる(そもそも「直」がないから)。どういう背景で導入されたか知らないけど、もし交差点の事故を減らすためだったとしたら、考案者は賢すぎ。日本にどんどん導入すべき。交通死亡者も減らせるだろうから、お金の投資価値がある。うまく説明すれば、国民の理解も得られるはず。はじめは慣れずにミニ事故が増えるかもしれないが。。。

一方、電車で長距離移動は考えたくない。USよりはマシだけど。。。その点、日本はホントすごい。

<その他>
いろんなところでフリーWifiがある。バス、電車、お店など。旅行者にとってはとてもありがたいサービスだと思う。オリンピックを開催する日本も見習って欲しい。

と、日本やUSとの比較から、普段思ってることをダラダラと書いてみました。

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