2011年1月30日

半年

グラスゴー生活がスタートしてちょうど半年。
これまでの経過等を。

大学関連
超スローペースで進行中。及第点のものもなくはないけど、総合的には当初予定より数ヶ月の遅れがすでに発生。とにかく、この遅れがさらに大きくならないようにしないといかん。

以下、カテゴリーごとに:

研究
比較的順調(?)なのはプロジェクト・ライセンス。
大きなトラブルもなく進んでいて、もしかしたら2月中に独立プロジェクトの承認がおりるかも。ちょうど今週、ホームオフィスのインスペクターが来て、提出中の申請書についてフィードバックをもらった。概ねポジティブ・レスポンスで、指摘もマイナーだった。インスペクターさんとはこれから仲良くやっていかないといけないだけに、良い人で良かった。それにしても、UKのパーソナル/プロジェクト・ライセンス、噂以上にタフだった。

グラント申請については今3つ返事待ち。とにかくコンスタントに出しつつ、失敗から多くを学び、勝率を少しでも上げ、writing力向上に努めないといけません。

肝心の研究プロジェクトは、大学の物品購入システムに慣れるのにえらく時間がかかってストレスフルな日が続き、遅れの最大要因に。注文されてると思ってたものがされてなかったり、注文するために学部長を巻き込んでプッシュさせたり。。。とにかく次の半年、研究以外は極力手を抜き挽回をはからないといけません。

教育&アドミン
今のところ何も義務はない。だけれども、来た当初、教育関連のコースを受けた。それはメチャ勉強になった。今年10月から何かしらスタートする雰囲気だから、夏ごろから準備で少し忙しくなるのかも。。。効率良く準備する方法を身に付けないといけない。

その他
多くの仕事で、事務系の人や同僚のサポートが必要。この半年で、誰に何を聞くと良いかだいぶわかってきた。あと、人によってペースが当然違うから、そのペースをあらかじめ織り込んで仕事を依頼するタイミング・仕方を考えていかないといけない。

ちなみに、普段の生活のリズムも固まってきて、朝はバスで論文を読みながら通勤し、朝2ブロック、午後1か2ブロックで仕事をこなして、帰りのバスで新聞読んで、夜寝る前にまた論文を読む、という感じ。論文を読む量は以前より増えたか。

それにしても、日々のメール量が以前に比べ格段に上がってて、それをどう裁くかは要工夫。


生活関連
グラスゴーそのものは住みやすい。街はきれいで都会で便利。白人以外の割合はやはり少ないけど、親切な人が多い。ただ、喫煙率が異様に高く、年配の女性も普通にスパスパすってる。。。気候については、12月の寒さはシャレにならなかった。けど、1月は0~8度くらいのレンジで推移してて、寒すぎ、ということはなかった。雪も1日くらい少し降った程度。これが平均的な冬みたい(そう信じたい)。一方で、天気のダイナミックさはすごい。地面が乾く、ということがない。。。

以下、カテゴリーごとに:

住居
住居として選んだClarkston。車で10分程度のところにショッピングセンターが複数あって、徒歩範囲に学校、銀行、簡単なお店が揃ってて便利。大学まではバスで40分くらいと遠いけど、もう慣れたか。

言葉
スコティッシュ・アクセントはこの半年で少しフィルターみたいなものができつつあるかも。たまにスコティッシュ英語のハルシネーションが起こるようになってきた。5年も住むとスコティッシュアクセントでトークしたりし始めるやも知れない。。。それにしても、わからん人はホントわからん!幸い、研究所ではブリティッシュ英語率が高いから大きな問題はないか。

ちなみに、英語力はグラスゴーに来てから、というより、一年前のジョブインタビュー・ネゴシエーションから勘定すると随分レベルアップした感覚はある。というか、コンプレックスが随分と解消された、という感覚。トラウマも積極的に耐えると少し克服されるという行動療法があるけど、それに近いのかもしれない。どうしても克服しないといけない弱点も正面向いて闘うとそれなりに改善される?

文化
UKのことをろくに知らずに住み始めたけど、USとえらく違うことが多くてカルチャーショックが続いている。見た目は同じ人たちなのに、こうも違うのか、と。。。日本とUSが座標軸の両極にあるとすると、UKは日本寄り。なので見た目に惑わされてはいけない。僕個人の性格的には、US的な良い意味でテキトーなところが居心地は良いのかなぁ、という気はする。一方、USの悪い意味でテキトーな部分は、winnerでないと厳しいからその辺は日本やUK的なところが良い。例えば、医療に関しては、お金があるならUSで質の高いものを受けられるのだろうけど、そうでない、もしくは中途半端なポジションなら、UKや日本みたいに最高は期待できなくても、最低限は期待して良いというのは悪くない。ちなみに、その医療は日本の方が絶対良いです。。。体験としてまだ悪例はないけど、新聞を読んでるとUKのひどさはたくさん伝わってきてる。「free」というのはやはり問題なのだろう。

その他
政治に関しては、今のところ悪い印象は受けてない。もちろん、良い国か?と聞かれたら、yesとは答えないけれど。財政について、もう手遅れかどうかはともかく、とりあえず問題に立ち向かう姿勢は伝わるし、政治家のローカルな利益にこだわって、足を引っ張り合って全体の利益を見失う、ということは、少ないというか、例を今挙げてみろ、と言われても僕は挙げられない。けど、最近話題になってるガソリン代の高騰、早急に何とかしないと、みんな動かなくなって、経済の足を引っ張るのは確実だろう。ガソリン満タンに50ポンドなんて払ってられない。エジプト絡みでさらに上がってるみたいだし。。。

家庭レベルの生活費について。子供の学校がタダなのはありがたい。一方で、地方自治体へのタックスがそれなりにかかったり、VATは20%。住居費はUS生活時よりは安い。トータルの出費は同じくらいか。物価はポンドが安くなった分、聞いてたほど高くない。来た当初は数年後に家でも買えたら、と目論んでたけど、もうやめた。家賃は捨てるようなものというけど、家みたいな大きなものを買うリスクをいろんな観点から勘定に入れると、トントンかむしろマイナスかなという感じ。それよりお金は別の使い道を考えた方が長期的には良いかな?と、今は考えてる。

子供の教育については、イングランドよりスコットランドが良いらしい。ただ、他の先進国や香港や韓国などに比べるとUKの教育は良くない、という統計上の話。少なくとも相対的な質がここ数年で悪くなったもよう。大学も来年から授業料が上がるから、タレントはどんどんUSへ流れる方向に向かうのだろう。ちなみに、うちの長女はまだP1(日本でいうなら年長さん)だけど、すでにいろんな一般常識的なことを日々学んでるもよう。4,5歳から義務教育がスタートするのは良いことだと思う。日本語については、土曜日に日本語補習校に通ってはいる。大きくなるにつれ、この辺は親もますます努力しないといかんのだろう。

最後に移民の受け入れについて。UKは排他的。中国やインドから優秀な人材をどんどん受け入れて国力を上げようというより、国内の人材で賄いたいというニュアンスが非常に強い(教育が悪かったり、若者の非雇用率が異様に高い、という数字が出ているにも関わらず)。ビザ制度もさらに厳しくなっていく感じで、2年半後の更新時どうなるんだろう?という不安はある。以前、制度を変更してから労働ビザ系は一気に厳しくなって、カナダとかに流れが変わったという話を聞いたことがある。新聞では、ビザで来たものの働いていない人たちが多い、ということを根拠に移民制度を強化せよ的な論調も見受けられる。少なくとも、USより排他的なのは確実。一方で、個人レベルでは、少なくともスコットランドでは、それに関して特別嫌な思いをしたことが今のところなくて、上述のように人々は非常に親切。この辺のギャップにはまだ戸惑いがある。

だいたい主なことはコメントしたか?そんな半年でした。

2011年1月22日

内、3タスク

日本では「若者が内向き過ぎてケシカラン」、と「最近の若者は・・・」論の最新版として一部の年配が若者を攻撃(?)しているとか。。そんなことを助長してるマスコミの「内向き」を直すことこそ優先順位が高いのに・・・と思う今日この頃。

内か外かは、結局バランスの問題だから、その両方を天秤にかけてさえいれば、傾向なり数字として「内」の結果が出てもなんら問題ない。日本がそれだけ良い国だという指標にもなる。

研究者に関して。

昨年、若い人たちの前でトークした時。トークの初っ端「どれくらい留学したい?」と聴いたら8割くらいの人が手を挙げていた。

躊躇なく。

もちろん、そういう主旨の会だったからそういう若者が集まったのかもしれない。けど、外を向いている、あるいは内外バランス良く考えている人たちは確実な数いてる。英語がうまい人も多い。

問題は、彼らを取り巻く環境。僕が昔そうだった様に、海外へ行く場合、金銭面の壁が大きいと思うから、その辺をサポートする体制がもう少し整えばもっともっとみんな海外に行く(行ってしまう)と思う。それから、海外にはポスドクの公募が結構な数あったり、日本にいた時は聞いたことなかったフェローシップなんかもあって、チャンスはそれなりにはある。もしもっと海外に若手研究者を送り出したいなら、その辺の情報を伝えるだけでも、数は増えるだろう。

ただし、「海外へ行け・行く」と言う場合、それが目的になってしまったら、特に研究の場合、本末転倒。日本ではできない良いサイエンスができるからこそ海外へ行くべきで、留学アリキだったら単に海外旅行の延長でしかないし、おそらく失敗する。

海外旅行ではない、ビザのいる海外生活にはそれなりのコミットメントがいる。

それはともかく、この一週間のまとめ。

まず研究以外のタスクを3つ抱えてた。

一つ目は、10月頃からスタートしてた研究キャリア関連コースのアサインメント提出締切が昨日だった。そのアサインメントは2つ。1つは2500字レポート(5ページ)。もう一つはグループ活動やら個人活動レポート。

こういうのはトップを目指す必要はないからとにかく単位さえ取れればOK。なので、大して読み返すこともせず出来た時点で送った。このコース、2回目のソーシャルスキル関連のセッション以外、学ぶことがなかったな。。。probation periodをクリアするのに一定の単位を取ることが課せられてるから仕方なく、、、という感じ。浪費した。。。

二つ目のタスク。これは同僚のラボの学生さんの学位審査。UKではdefenseとは言わずvivaというらしい。形式も全然わかってないのにinternal examinerなるものを引き受けることに。

年末に学位論文をもらえるときいていたのに、実際もらったのは今週頭。

300ページ弱もある超大作。。。(引き受けたことを後悔した。。。)

とりあえず、学位論文をもらった翌日から、朝はこの「図鑑」の読破に割いてます。。。

内容は、神経科学とは言えど、普段のアンテナ外だから、ほぼno backgroundの状態で一からお勉強。けど、それがかなり面白いというか文字通り勉強になっている。自分の研究とどうリンクを作るかという思考実験みたいなことをする良い機会になってるし、これからジャーナルをチェックするときのアンテナが広がった。そう思わないとやってられんといえばそうか。。。

こちらは来週末レビューレポートを提出し、再来週末そのvivaなるものがあるらしい。

最後のタスクは、昨日突然振ってきたもの。年が変わったから2010年活動レポートを提出しないといかんらしい。。。昨年、一部の部門で試験導入され、今年から全学導入。大学のストラテジーにスタッフのパフォーマンスを沿わせる意図があるのだろう。これでホントに全体のパフォーマンスが上がるなら良いけど、もしそうではなかったら、意味もなく根付かせる前にやめるべきだろう。

この手の締切が設定されてるタスクは午前にこなし、午後は研究関連。

当面、実験計測システムはLabVIEWをメインに使っていくことにしてる。プログラムができない学生さんが入ってきた時に備え、LabVIEWでシステム構築しておこうという目論み。というのは、LabVIEWはプログラムを学ぶ敷居が低く、自分のやりたい実験へカスタマイズしやすいから。元ラボではmatlabとLabVIEWを組み合わせててほぼ同じものをLabVIEWだけで作り直すから、短期的には時間のむだかもしれないけど、上記の理由でLabVIEWへ移植中。やっぱり制御・計測に関してはLabVIEWだといろんな遊びが簡単にできるから良い。

グラント書きは、小規模のものを3つ作成中で、その一つを仕上げて学内処理へ。来週中には送れるか?

二つ目も来週中には学内へsubmitできそう。

今は就活のように数打って当てる戦略を採用中。強いCVならじっくり勝負できるんだろうけど、、、

そんな、いろいろやってる割には実質何も進んでいない一週間でした。

2011年1月16日

Peter’s Seafood & Grill

車で10分くらいのEast Kilbrideにあるシーフードレストラン
ウェブ上の評判が良かったので昨晩行ってみた。

パン屋やコインランドーの並ぶミニ商店街(?)の一角。外見は派手じゃないから、何も知らなかったら入るのを躊躇するような雰囲気。いわゆる「隠れ家」的レストランというと聞こえは良いかもしれない。

比較的こじんまりとしてるけどきれいな店内。

アジア系、だけどバリバリのスコティッシュアクセントで話す親切な店員が席に案内してくれた。オーナーの奥さんなのかもしれない。親切な方だった。

pre-theatreの時間帯だったので安くコースを注文でき、大人二人と長女の3人分、コースを頼む。オードブル・メイン・デザートのコース。

シーフードレストランなのでメインはシーフード系を頼む。

オードブルからデザートまでフレンチ系のアレンジで美味かった。長女の頼んだスモーク鯖の乗ったリゾットがかなりいけた。デザートも僕が頼んだチーズケーキはアメリカンに甘かったけど、嫁さんの頼んだpuddingは良かった。

ホントはこのレストランには年末の結婚記念日に行く予定で予約してたのだけれども、次女が熱を出して当日キャンセル。そのリベンジとして昨晩行った。

できれば月一くらいでこういう外食するのが今年のNew Year Resolutionsの一つ。

次女がもう少し大人しくしてくれればの話だけれども。。。

ちなみに、このレストランはきれいなだったけど、キッズフレンドリーなアットホームな雰囲気でもあった。

モジュール5

UKの「プロジェクト・ライセンス」関連の話題。

カナダにいてる元同僚とメールでやり取りする機会があって、ついでにプロジェクト・ライセンスのプロセスの大変さをグッチっても、「そんなもん、アメリカにいてた元ボスから『プロトコール』の原稿をもらってコピペすればえぇんちゃうか」と、その本当の大変さを理解してもらえない。。。

そのプロジェクトライセンスは、30ページ強の申請書作成から始まり、学内倫理委員会の会議でフィードバックを仰ぎ、訂正後承認を受け、最後はUKの政府機関Home Officeへ提出、政府からの承認を得て始めて発行される。

ライセンスなしでプロジェクトをスタートするのはイリーガル。

ようはプロジェクトをスタートするためのビザのようなもの。

経験上、米国やUKのビザより手間隙かかる。。。

もちろんUKにいてるというのもあるし、このプロセスは必要、ということに最近ようやくコミットしてきた。

僕の場合、9月頃だったか、11月に開催予定の学内倫理委員会をターゲットに設定し、申請書を本格的に作成しはじめた。いろんな待ち時間も結構長かったけど、年明けになんとかすべてのプロセスをクリアして今週Home Officeへ提出。

ここからさらにHome Officeからクレームがついてリバイスしライセンスが発行されるとのこと。だいたいアプリケーションを準備しはじめてから半年は見ておく必要があるらしく、僕のケースもだいたいそんな感じで進んでいる。

そのペーパーワークに加え、モジュール5なるコースを受けることも義務付けられてて、それを今週木・金曜日に受けてきた。

ホントは12月上旬に予定されてたけど、寒波のおかげでそのコースを担当している人たちがロンドンから来れなくなって急遽キャンセル。

が、なんとか再スケジュールしてくれ、今週開催された。

このコースでは2日間拘束されるのだけれども、両日午後は法律の説明という感じでえらく退屈だった。

一方で、勉強になることもあった。まず、初日午前前半の倫理。これは歴史を知る上でえらく勉強になった。2日目午前の実験デザインと統計。これもなかなか勉強になった。

それ以外の時間帯は、講師も内容に対して情熱が一切なく悪循環レクチャーだった。

パーソナルライセンスも含め、これで一連のモジュールはすべて受けたことになる。

UKは良い意味でも悪い意味でも極端なポジションにあるのが良くわかった。

日本はその対極にある。

実際、このコースのレクチャー中、1つのスライドに各国の制度を比較した表が登場。20くらいの規制項目を先進国で比較していて、UKではすべて「yes」だったの対し、日本はほとんどが「no」だった。。。米国や他のEU諸国は中間だった。

が、個人的には、だからと言って、日本ではみんな倫理観が低いかというと、僕は必ずしもそうは思わない。一例ではあるけど、米国やUKで動物慰霊祭なんてきいたことないし、日本には日本なりの良い点もある。おそらく、日本と欧米の違いは宗教・思想などの歴史的な文脈の違いによるところが大きそうだから、その結果として法律・制度が違うのは仕方ない。

ただ、法律がどうこう以前に、研究で動物を使わざるを得ない場合、一度はその辺のことを知っておくべきなんだと思う。あと、研究者に対する教育システムはあっても良いように思う。例えば、よく登場する3Rを念頭に置きながら研究をはじめるだけでも違いを生むと思う。それから、ウェブで明らかにその辺の配慮が欠けた情報を流す研究者がいたりする。それはとても悲しいし、明らかに倫理観に問題がある。そのことには気付いて欲しい。研究者以前のヒトとして。

一方で、逆の過度な主張(つまり過激な動物愛護)をして特定のターゲットを攻撃する場合、できればその主張の反対側の思想的な部分(なぜ研究に動物を使わざるをえないのか、使う場合どういう配慮をしながら技術向上や数を減らそうとしているかといった部分など)や、研究以外(例えば、食料関連からペット産業まで)でどれほど動物の自由・命が人によって失われているかそういう事実を知る必要があるのだろう。

そういうことを知った上で、どういう立場をとるかは個人の自由だと思うし、そうして初めてどちらかの立場を主張する正当性が生まれるんだと思う。もちろん、今Aという立場をとってるから、それを正当化するために理論武装するのもあって良い。とにかく、昔から続いていて少なくとも当面は解決することのない大きな問題だから、まずは両者を知ることがお互い理解しあうスタートポイントなんだろう。

2011年1月15日

グラスゴー・ニューロサイエンス・デー

グラスゴーで神経科学関連の研究をやってる大学は3つある。グラスゴー大を筆頭に、僕のいるストラスクライド大、あとカレドニアン大。その3つの大学+アルファの神経科学者たちが集まるミニ学会が水曜日開催された。

場所はカレドニアン大。市の中心にあるブキャナン・バスターミナルのすぐ裏手にキャンパスがあり、きれいな建物だった。ストラスクライド大からは徒歩10分ほど。

ミーティングの形式はシングルトラックのオーラルセッションで、休憩・ランチ時間にポスター時間が割り当てられてるよくある形式。

オーラルは学生からプロフェッサーまで15分か30分の枠でトーク。

最後に、British Neuroscience Associationの次期プレジデント(?)に選ばれてるNutt氏がUKのdrugs政策について1時間トークしてくれた。政治家が「サイエンスする」ことがよくわかったりと、メチャ興味深かった。

彼のメッセージは、アルコールを何らかの形で規制していかないといけないし、一部のdrugsが科学的根拠に基づかず必要以上に規制され医療発展の妨げになってるといったことをメッセージとして伝えていた。UKマスコミのバイアス、政治のパワーなどのかなりリアルな話が聴けた。

このイベントに終日参加したけど、グラスゴー大にはやはり良い科学をしているラボがあって良い刺激になった。こういう機会を使ってネットワークを広げていかないといけないのだろう。

Work Loads Meeting

今週火曜、work loads meetingなるものがあった。

過去のエントリーでも書いてきたように、今の僕のポジションはprobationary period付きlecturer。

probationary periodというのは、米国のテニュアトラックとは違うけど、大学のスタッフとしてしっかりパフォーマンスをできるようメンター付きで定期的に軌道修正しながら教育していく期間。

3年間がprobationary period。

毎年2月にアニュアルレビュープロセスがスタートするらしく(それがどんなものかは僕はまだ知らないが、とりあえずペーパーワークがあるのは確か)、その前のイベントとしてwork loads meetingが開かれた。

メンターと二人で15分くらいの個人面談。

進捗みたいなものを話すんだろうと思って、少し準備して臨んで椅子に座った。まず一枚の紙切れを渡された。

そこにはいくつかの「スコア」が書かれていた。

仕事カテゴリーとして、research, administration, teachingの3つがある。それぞれについてスコアがかかれていた。

そのスコアは、僕の現時点の点数、それから僕と同じようにprobation period中のprobationerの平均スコア、そして正式にlecturerになった人たちの平均スコアも併記されていた。

僕はteachingもadmin系の仕事も一切やってないので、当然ゼロ。

研究は1点強。

一方、probationerの平均スコアは2点強。。。

駄目じゃん。。

ショックを受けながら、メンターの話をきいてみると、最初にしては悪くないスコアらしい。ホントか?

このスコアをどう計算しているかきいてみたら、
1.論文
2.お金をどれくらい使ったか
3.PhD学生をどれくらい面倒みてるか
4.どれくらいグラントにアプライしたか
という項目があり、計算方法がしっかり定義されていて、最終的に項目ごとに重み付けをして研究スコアをはじき出すとのこと。

2番目のどれくらいお金を使ったか、が評価基準に入るのは意外だったけど、結局これにはどれくらいグラントを取って使ったか、というのが反映されるわけだから、それなりに研究力は反映される。

4番目はどれくらいの規模のグラントにアプライしたかが勘定されるらしい。成否関わらず。。。なので、BBSRCやWellcome Trustなんかに「とりあえず」アプライさえすれば点数を稼げる。(もちろん、重み付けが低いので、グラントアプリケーションを書くより論文を書いた方が効率は良いとは思うが。)

1番目の論文はもちろんIFが使われる。

それなりにフェアな計算方法かなと思った。

ただ、お金だけ使って低インパクトの論文を多産する人と、少額で高インパクトの論文を一つ出す人とを区別できるんだろうか?とは思った。とにかく、論文を出すのが他のファクターにも影響するのは間違いないから優先順位が高いのが確かだろう。

あと、Teachingに関しても、ミニ項目が設けられていて、それなりにフェアな計算方法だなぁという印象は受けた。例えば、引継ぎ授業より新規授業を持った方が高得点が稼げる。それは準備に膨大な時間が必要だから、その辺が考慮に入れられている。

とりあえず、teachingとadminは平均以下で良いからresearchで他を補うようにしていくのが一番良いストラテジーなんだろう。

そのミーティングの最後、来年度のteachingの話に。

どうやら、学部生対象の実習授業で科学(化学?)計算を教えるレクチャーの一部を担当するらしい。。。きたよ。。。10月からスタート。

あとはneuroscienceのカリキュラムを本格的に立ち上げていくらしく、その一部に関わっていくことになるらしい。とりあえず僕が担当するのはジャーナルクラブ的なものらしいけど、自分の専門と直結するteachingなら俄然モチベーションが上がる。将来のラボメンバーをリクルートするのにも良い。カリキュラムをスクラッチから構築していくわけだから、自由度も高いしやりがいという点ではありそう。その分、時間はかかるのやもしれないが。

そんな感じの15分のミーティングでした。

BBSRC

今週火曜日、BBSRCのNew Investigator schemeというグラントにアプライ。

3年間サポートが標準で、額は平均400Kくらい(indirect cost含む)。こういう政府系のグラントが当たると「一人前」なのだろうけど、周りの同僚はことごとく討ち死にしてる。。。厳しい。。。success rateは25%くらいで、New Investigator schemeはもう少し高いらしい。

結果は6月にわかるもよう。

fingers crossedです。。。

以下、もう少し詳しく:

申請書作成は、主に午前中を申請書書きに当てながら進め、結局1ヵ月半かかった。いろんな書類を用意する必要があって、
・アウトライン(objectives, summary, technical summary, academic beneficiaries, impact summaryという構成。)
・Case for Support (研究者・研究環境のまとめ、データシェアリングプラン、研究計画という構成)
・Pathways to impact
・Justification of resources
・costing
・CV
・その他
といった内容。

「その他」と書いた中には、New Investigator schemeの場合、研究所所長からのレターがいるからそのレター。他には、レフリー情報、申請内容がどのカテゴリーに入るかとかいったアンケートみたいなものなど。

肝はCase for Supportの研究計画。

6ページと、NIHのR01に比べたら半分くらいしかない。なので図も入れてメッセージを効率的に伝えるのは結構大変。

が、他のペーパーワークも入れると30ページ以上に膨れ上がった。

アメリカのグラント申請はよく知らないけど、UKの場合、予算計画も細かく計画する必要があるなぁと思った。僕のいる大学には、その予算計画用ウェブツールが導入されていて、それに数字を入れたり項目を設定していけば間接経費は自動計算される(それでも超面倒)。

申請書が出来上がったら、年明けにまず研究所内の承認を得るプロセスを経て、大学側の承認をもらう。この承認プロセスはこう:BBSRCへの申請はウェブベースで、その申請書上の予算の数字と大学のシステム上の数字の不一致や、ちょっとした入力ミス・知識不足による間違いなどによる不備を大学担当者に指摘を受けながら訂正する。事務系の人がすごくhelpfulな人で、申請書がほぼレディーの状態になってから実質2日で承認までいけた。

承認後、BBSRCへsubmit。

申請はJe-Sなるウェブベースの申請システムがあって、そこに並んでる項目に一つ一つ必要情報を入力、あるいはファイルをアップしていく。

正直、これだけの量があると、ケアレスミスをなくすのはかなり困難。

ちなみに、Case for Supportは研究所のベテランプロフェッサー二人にフィードバックを仰いだ。細かい手直しは少しあったけど、思ったほど大きな変更は要求されなかった。

ちと不安。。。

年末年始であまり読む時間がなく表面的な手直ししかしてもらえなかったとすると、肝心のコンテンツの部分は局所解にハマったままリジェクト、ということになる。。。

proof-readingは、隣のラボのnativeスピーカーの学生さんとポスドクにお願いした。意外とあまり直されなかった。

さらに不安。。。

とにかく、最初の申請なので、レフリーから良いフィードバックをもらって次で当てられれば御の字か。

ちなみに、これが当たればポスドクを雇える。
UKの場合、スタートアップ資金はほとんどないから、Wellcome Trustのフェローシップをあてて独立してない限り、こうして政府系の大きなグラントを当てないとポスドクは雇えない。。。もちろん、ポスドクさんが自分でフェローシップを当ててくる、というよくある選択肢もあるけど、僕のラボに持参金付きできたい、なんて言ってくれるようなポスドクがあらわれるにはまだまだ相当時間がかかるはず。。。とにかく良いサイエンスして論文出してお金を取って、、、、それが当面の課題です。

fingers crossed

2011年1月9日

大詰め

スコットランドは4日はバンクホリデーなので(イングランドもそうかはよく知らない。。)みんなは5日から仕事始めでした。

この2ヶ月くらいかけてきたグラント申請書が大詰め。この一週間はその校正と予算関連のペーパーワークが主。11日締切なので、明日最終チェックでsubmitという流れ(のはず)。

申請書のコアである研究提案は10ページ以下でも、それ以外の項目がかなりあって、最終的には30ページ強の申請書に。

今回はpeer-reviewを同じ研究所のベテランプロフェッサー二人、proof readingは隣のラボのPhD学生さんとポスドクにお願いした。

メッセージは伝わっても、やっぱり細かい表現・エラーが逆nudgeとして働く。その辺のリスクを最小限に留めたい場合、今の僕の英語力だけでは限界があるのが辛いところ。。。ラボメンバーにnativeスピーカーを持つのはessentialだな。

とにかく明日の最終チェック、頑張ります。

UK全体としては、4日からVATが2.5%アップし、食料品以外のものが実質2%強値上げ。新聞によると便乗値上げしてる業界やら店が結構あるらしく、ショッピング欲は激しく抑えられたのは間違いない。問題は、これが短期的なものですぐにみんなお金を使い出すのかそうでないのか、景気(財政)回復にどれくらいつながっていくのかというところか。UK、危機感を行動に移してるのは良いとは思うけど、各論の部分がホントに良いのかは実験的な部分もあるんだろう。

ちなみに、金曜日の晩から雪がまた降って土曜の朝までに数センチの積雪。

土曜日は40マイルくらい東にある日本語学校の日なので、ウェブで道路状況などを確認してとりあえずOKそうだったので向かった(エディンバラ空港は閉鎖されていたが)。今回、道路はすでに対応済みで大きな問題はなかった。

クリスマス前の寒波もそれほどドカ雪ではなかったのに、都市機能が完全に麻痺したのは何でだったんだろう。。。

今日は近くのショッピングモールにいって長女とアイススケート。時間制限付だけど大人+子供で6ポンド弱+スケート靴フリーなので結構お得。それにしても、こっちの人はうまい人が結構多い。

2011年1月3日

仕事始め

月曜日でキリが良いので今日仕事始め。

朝のバスはさすがにいつもより乗客は少なかった。けど、「常連」も乗ってた。

研究所は、明日までホリデーという人がほとんどで、見かけた人は、セキュリティー関連のおじさんとアジア系の学生さんだけ。

それにしてもこのホリデー期間、メールの量が激減して仕事がはかどった。逆に言えば、も書いたように、メールはできるだけ見ない、もしくは対応する時間帯をしっかり決めるのが良いのだろう。(それがなかなか難しい。。。)

年末から小規模グラントを書きはじめてそれが局所解にハマってきた。ということで、今日からもう一つのグラント書きスタート。

小規模なものは分量が少ない分、できるだけシンプルでわかりやすいプロジェクトを書くのが良いのかな?という気がしてきた。あと、5ページくらいで数十K、20ページくらいで数百Kとかなると、小規模グラントを一つ二つ取ったら、大型のものだけに集中した方が効率は良いのだろう。中には20ページくらい書かせて100Kもくれなん的なものもあって、そんなんやってられん、と思ったり。。。(むしろ、そういうのはみんな避けるだろうからsuccess rateは高いのかもしれない。。。)

ページ数、グラント額、success rateを3Dプロットして、効率の良さそうなものからアプライするのが良いのやもしれん。

それはともかく、年末年始、今年とその後の優先順位を考えて具体的な戦略も少し練ったので、迷いが若干解消された気がする。このグラントはこれ、というのが考えやすくなったかも。

とにかく今年はいろんなレベルのマルチタスクが要求されてます。。。

2011年1月2日

スコティッシュ・クラブ鋤

大晦日SeeWooへ行ってカニを1杯購入。

昨日、元旦の夜にカニスキをいただく。

カニは、スコティッシュ・クラブというのか、ハサミが大きくて先端が黒いという特徴を持つカニ。あまり美味そうには見えない。。。

鍋に良いのかわからなかったけど実験的にカニスキを試みる。

昆布でダシをとって、酒と醤油を少々。

カニは、とりあえず足を解体。そして、ノコギリみたいな包丁で胴体を半分に(甲羅が堅くて手強かった)。

あとは普通の鍋のようにカニやら白菜やらを入れてひたすら茹でた。マロニなんてものは手に入らないので、中華系のライスヌードルで代用。これがパスタ並みに安い。この麺、茹で過ぎるとバラバラになるけど、悪くない。

カニから良いダシが出て、身も普通にカニで(当り前か)結構美味しかったです。カニ味噌もかなり入ってたし。

ハサミの殻が手強くて、大き目の調理用ハサミは歯が立たなかった。なので、備え付けキッチン用品のスリコギみたいな石製調理道具で殻を叩き割って食べた。原始人のように。

1杯たった1ポンドで、メチャ低コストのカニ鋤でした。

Inception

インセプション [DVD]
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Inception (DVD)(amazon.co.uk)


Once an idea’s taken hold in the brain it’s almost impossible to eradicate.

人の夢にアクセスして、「情報」というより「アイデア」を盗み出す。冒頭のCobbとSaitoのやり取りにこのInceptionの基本コンセプトが凝縮されてるか。

このInceptionという映画、メチャクチャ面白かったです。

Christopher Nolanというとメメントとバットマン2作を観たことがあるけど、この監督はすごい。

このInceptionは映像もすごいから視覚に入ってくるものだけでもそれなりに楽しめる。Ken Watanabeさんも全編に渡ってキーパーソンとして活躍するし、日本も舞台になってるからいろんな意味でツボを刺激された。

文字通り迷路のようなストーリー性を持ってて、1回見ただけだと消化できてないシーンが多々ある。だからメメントのように2,3回見てようやくAha!ということになりそう。

映像的にはキッズでも見れないことはないけど、ストーリーは「アダルト」向け。特に神経科学者や建築家といったいろんなプロフェッショナルな人のツボをついてくるんではないか。

夢に興味のある人にお薦めの映画です。



2011年1月1日

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

昨年は研究に割いた時間が少なくフラストレーションのたまる一年でした。今年はゴールを常に意識した時間の使い方を心がけたいと思ってます。

特に今年は、独立した、ということを一日でも早く示す必要があると思ってます。比較的早く結果が期待できるテーマ、数年後に少し形になるテーマ、そして今までまじめに考えてこなかった新規分野、この3つのテーマを、一つのコアテーマを中心にしながら進めていきたいと思っています。

話は変わってグラスゴーでの初めての年越しについて。

ジョージスクエアでは、カウントダウンイベントが開催されていたようで、新年と同時にいたるところで花火が上がってました。うちの周辺としては、叫びながら爆竹を各うちの前に叩き付けて走っていった上半身裸の高校生くらいの一人の若者がとてもインプレッシヴでした。。。初笑いをもっていかれた。。。

テレビは11時半ごろからロンドンとエディンバラの中継がたまに入って、10分前くらいからロンドンの中継。ロンドン・アイの花火、初めて見ましたが今年は音楽とシンクロさせてて、なかなかすごかったです。


来年2012年はオリンピック年なので、世界にアピールすべくもっと気合いが入るのかもしれませn。これは一回ナマで見る価値あるかも?と思いました。

とにもかくにも今年はかなり重要な一年なので頑張ります。