2011年1月16日

モジュール5

UKの「プロジェクト・ライセンス」関連の話題。

カナダにいてる元同僚とメールでやり取りする機会があって、ついでにプロジェクト・ライセンスのプロセスの大変さをグッチっても、「そんなもん、アメリカにいてた元ボスから『プロトコール』の原稿をもらってコピペすればえぇんちゃうか」と、その本当の大変さを理解してもらえない。。。

そのプロジェクトライセンスは、30ページ強の申請書作成から始まり、学内倫理委員会の会議でフィードバックを仰ぎ、訂正後承認を受け、最後はUKの政府機関Home Officeへ提出、政府からの承認を得て始めて発行される。

ライセンスなしでプロジェクトをスタートするのはイリーガル。

ようはプロジェクトをスタートするためのビザのようなもの。

経験上、米国やUKのビザより手間隙かかる。。。

もちろんUKにいてるというのもあるし、このプロセスは必要、ということに最近ようやくコミットしてきた。

僕の場合、9月頃だったか、11月に開催予定の学内倫理委員会をターゲットに設定し、申請書を本格的に作成しはじめた。いろんな待ち時間も結構長かったけど、年明けになんとかすべてのプロセスをクリアして今週Home Officeへ提出。

ここからさらにHome Officeからクレームがついてリバイスしライセンスが発行されるとのこと。だいたいアプリケーションを準備しはじめてから半年は見ておく必要があるらしく、僕のケースもだいたいそんな感じで進んでいる。

そのペーパーワークに加え、モジュール5なるコースを受けることも義務付けられてて、それを今週木・金曜日に受けてきた。

ホントは12月上旬に予定されてたけど、寒波のおかげでそのコースを担当している人たちがロンドンから来れなくなって急遽キャンセル。

が、なんとか再スケジュールしてくれ、今週開催された。

このコースでは2日間拘束されるのだけれども、両日午後は法律の説明という感じでえらく退屈だった。

一方で、勉強になることもあった。まず、初日午前前半の倫理。これは歴史を知る上でえらく勉強になった。2日目午前の実験デザインと統計。これもなかなか勉強になった。

それ以外の時間帯は、講師も内容に対して情熱が一切なく悪循環レクチャーだった。

パーソナルライセンスも含め、これで一連のモジュールはすべて受けたことになる。

UKは良い意味でも悪い意味でも極端なポジションにあるのが良くわかった。

日本はその対極にある。

実際、このコースのレクチャー中、1つのスライドに各国の制度を比較した表が登場。20くらいの規制項目を先進国で比較していて、UKではすべて「yes」だったの対し、日本はほとんどが「no」だった。。。米国や他のEU諸国は中間だった。

が、個人的には、だからと言って、日本ではみんな倫理観が低いかというと、僕は必ずしもそうは思わない。一例ではあるけど、米国やUKで動物慰霊祭なんてきいたことないし、日本には日本なりの良い点もある。おそらく、日本と欧米の違いは宗教・思想などの歴史的な文脈の違いによるところが大きそうだから、その結果として法律・制度が違うのは仕方ない。

ただ、法律がどうこう以前に、研究で動物を使わざるを得ない場合、一度はその辺のことを知っておくべきなんだと思う。あと、研究者に対する教育システムはあっても良いように思う。例えば、よく登場する3Rを念頭に置きながら研究をはじめるだけでも違いを生むと思う。それから、ウェブで明らかにその辺の配慮が欠けた情報を流す研究者がいたりする。それはとても悲しいし、明らかに倫理観に問題がある。そのことには気付いて欲しい。研究者以前のヒトとして。

一方で、逆の過度な主張(つまり過激な動物愛護)をして特定のターゲットを攻撃する場合、できればその主張の反対側の思想的な部分(なぜ研究に動物を使わざるをえないのか、使う場合どういう配慮をしながら技術向上や数を減らそうとしているかといった部分など)や、研究以外(例えば、食料関連からペット産業まで)でどれほど動物の自由・命が人によって失われているかそういう事実を知る必要があるのだろう。

そういうことを知った上で、どういう立場をとるかは個人の自由だと思うし、そうして初めてどちらかの立場を主張する正当性が生まれるんだと思う。もちろん、今Aという立場をとってるから、それを正当化するために理論武装するのもあって良い。とにかく、昔から続いていて少なくとも当面は解決することのない大きな問題だから、まずは両者を知ることがお互い理解しあうスタートポイントなんだろう。

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