2011年8月21日

ゾンビタウン

今、グラスゴーの一部がフィラデルフィアになってます。

8月15日から、グラスゴーのジョージスクエア周辺がWorld War Zなる来年末公開予定ブラッド・ピット主演の映画ロケに使われている。ロケは31日まで。

市の情報はこちら

連日、何かしらのニュース記事がここここここここ、といった具合で出て、ジョージスクエア周辺はちょっとしたお祭りの雰囲気。

いつも以上に多くの人がいて、みんな写真を撮ったりしている。

ジョージスクエアのウェブカムが普段からあって、今はちょうどロケ現場ということになっている。(20秒おき更新だから、なんのことかわかりにくいけど)

YouTubeにもこんな感じでニュース映像がアップされていたりする。

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7月上旬だったか、研究所内メーリングリストに”zombie seriously”なるメールがまわってきた。所長から(seriously)。

その添付ファイルを見ると、ハリウッド映画撮影のため、ジョージスクエア(グラスゴーの中心的な広場)周辺の道路が約2週間に渡って大規模な交通規制の対象となる、とあった。

そして、15日からロケ開始。
大学のある丘を降りたら、そこがロケ現場、という状況に。

映画上の設定はフィラデルフィア。

グラスゴーのグリッド上の道路、建物の雰囲気がフィラデルフィアに似てる、というのがロケ地としての選考理由らしい。

曇がちな天気がゾンビタウンとしてぴったりとか、市から映画制作会社にお金が渡ったとか、ではないもよう。

ちなみに、新聞上では、今回のロケは、2Mポンドの経済効果があるとされている。

フィラデルフィアという設定上、細かい部分も変更する必要があるわけで、数日のうちに、道路標識から信号、街頭にある市街地マップまでアメリカ化された。普段の町並みが変わったから結構楽しい。

市役所周辺にはイエローキャブやらフィラデルフィアの市バス、消防車、さらにはSWATチームの車まで配置されている。その中にはなぜか、なつかしNJ州ナンバーの車やマンハッタンでよく見たMTAのバスまで置いてあったりする。

そういった車たちは、船でわざわざ運んできたもよう。メチャ金かけてる。。。

しかも、カースタントでその一部の車を壊してたりしている。
映画上では、今となっては当り前のスケールの映像でも、実際は結構お金をかけてるんだなぁ、と実感。

主演はブラピらしく、ロンドンから電車貸切で家族とグラスゴー入りし、連日スイート宿泊とか。。(アホか)

ちなみに、そのWorld War Z、wikipediaをちょっと見てみると、世界を舞台にしたゾンビとの闘い、というホラーらしい。映画は来年末公開。

大ヒット間違いなしか。グラスゴーでは。

2011年8月14日

BBSRC結果

1月にアプライしたBBSRCグラントの返事が月曜日に戻ってきて、resubmission OKのreject、という結果。つまり、獲得金額ゼロ。

過去の関連エントリーはこちらこちら

割としっかりしたフィードバックが戻ってきて、ここ・ここを直してresubmissionせよ、だからと言って次通す保証はないし、とあった。

フィードバックの内容は、細かい部分が多く、いかにもUKらしい指摘も。相当細かい部分まで見られ、穴を指摘されたおしたな、という印象。反省。。。

政府系グラントは、想像以上に細部に注意して仕上げないといけない(当り前か)。申請時、これこれを買うからこれだけくれ、と細かく計算し、さらにそのjustificationも必要だったけど、もっともっと入念に考えて、この申請内容と買う物品類をもって確実に成果を挙げれることを、コミッティーに納得させれないと駄目。とすると、申請内容は、相当予測的なものである必要があるから、予備データなどもしっかり揃ってる状況でアプライするのがベストだったのだろう。。。

それから、サポート期間は最長3年だから、ambitiousなものより、テーマとお金という点で、よりフォーカスしたものが好まれる印象。このあたりのバランスは、おそらく過去の業績との相関性を見られるのだろうから、自己分析というのも大事なのだろう。

次につながる点としては、提案そのものに対する駄目ダシはなく、技術的な部分は評価してくれ、BBSRCのmeritの一つだと評価してくれていたこと(飴と鞭なんだろうが)。

とにかく、失敗から学ばないといけない。次ラウンドの締切は10月上旬。何とか対応して、次こそはゲットしたいところ。

が、もしもそれがうまくいったとしても、結果がわかるのは来春。。。

コンスタントに出し続けるのが大事なんだろうな。

イングランド暴動

先週末から始まったイングランドの暴動について。

事の発端は、gangの一員だったとされるMark Dugganという黒人が警官に射殺されたこと。だから、根本原因はと言われたら、UKのgangカルチャーと人種問題なのだろう。

ただ今回は、Black Berryやらソーシャルメディアの威力で、数日でイングランドの広範囲で暴動が拡散、しかもgangとは全く関係ないナイーブな若者まで加わって規模が大きくなった。

BBCに暴動拡散マップがあるけど、木曜日以降、暴動は起ってないようで、昨日プレミアリーグも無事開幕した。

それから、UK外ではあまり報じられていないであろう良いニュースとしては、暴動清掃キャンペーン(riot cleanup campaign)が、暴動直後から始まって、文字通り善良な市民たちがデッキブラシを持参し、街をきれいにしていた。この中には、もちろん黒人の人たちも、子供も参加してたもよう。こういうのを見ると、この国はもう少し頑張れそうだな、と思う。

しかし、すごい一週間だった。。。

Gangカルチャー
UKのgangのことは全然知らなかったけど、wikipediaにエントリーがある。

日本で言ったら暴力団に近いようなちょっと違うような、という感じか。とにかく、銃やらドラッグやらと結びつく反社会的集団みたい。

ローカルな話だと、やはりグラスゴーにもたくさんgangさんたちがいらっしゃるもよう。。。こわ。。。

原因
暴動の原因は諸説唱えられていて、おそらく暴動に加わった人たちが多様だから、原因も多様なのだろう(サイエンスみたい)。原因の各オプションは、wikipediaBBCの記事に挙げられている。

最近の政策で若者の閉塞感が増してる、というのは確かにそうなんだろうけど、個人的には、これは一部の大人の解釈であって、今回の暴動とexplicitな関係はないように感じている。例えば、gangの人たちと大学のtuition feeが来年から大幅アップするとかいった最近のことが今回の暴動の直接的引き金になったとはやや考えにくい。

一方、人種問題はUKでも根深いみたいで、10年周期くらいで暴動が発生している。人種問題という点では、アメリカなんかでも似た規模の暴動が起るリスクはあるんだろう。しかもウェポンが絡みそう。。。

黒人が白人警官に撃たれたといったニュースはアメリカでも数年前あったし、その黒人がもしもgangの一員で、gangを怒らせ、警官がなめられたりしたら、今回のようになる。

テクノロジー
個人的にすごいと思ったのはテクノロジー。

暴動とクリーンアップキャンペーンも、テクノロジーのおかげで一気に広がった。

スマートフォンやらソーシャルメディアで情報拡散スピード・範囲が、数年前には考えられなかったくらい早く・広くなっていて、暴動に関しては、警察がそのテクノロジーの変化に対応しきれていないのが表面化したように思う。

とにかく、テクノロジー発展のネガティブサイドとして、犯罪が同時多発的に起りやすくなって、しかも群をなしやすくなってる。

これからは、そんなネガティブ情報拡散を防ぐテクノロジーが注目を浴びるだろうし、サービスを提供する会社もそれを防ぐ責任が伴っていくように思う。

これは3・11の時でも同じように感じたから、ソーシャルメディアというすごいポテンシャルを秘めたテクノロジーに「社会」としてうまく適応していかないといけない。

雑感
労働党党首のEd Milibandさんが、暴動・フォンハッキング・財政問題との関係についてコメントした、と新聞記事があった。一件、強引なこじつけの様にも見えるけど、僕はこれは一理あると思う。

多くの人が目先の利益に走りすぎ、モラルみたいな、ちょっと考えて行動する傾向が減ってる。若者だけでなく大人も、UKだけでなくいろんな国で。ここ数年、将来の不確実性は増すばかりのように思うから、目先のことに焦点が向きがち。

環境変化が早いとそれに適応するのに精一杯で、将来予測どころではなくなる。けど、おそらく普遍的なものもあるのだろうから、それをしっかり見極めて意思決定していかないと、単に振り回されるだけの人生になってしまう。暴動に衝動的に加わり犯罪歴のついた若者たちのように。

2011年8月7日

リソースとしての電力

日本の電力不足がもたらしている研究へのインパクトについて、サイエンスが記事を掲載している。日本国内にいればもっと詳しい情報があるのだろうけど、この短い記事だけからでも、深刻な様子が伝わってくる。

この記事の最後にもあるけど、このまま原発が5月までにすべて止まって、来年の夏になったらどうなるんだろう。

一部の研究はもう諦めざるを得ない状況になるのではないか。なぜなら原発の替わりになるものが短期間で出てくるとは思えないから。電力というリソースがものをいう研究はもうできない。

今は円高だから化石燃料を安く買えるのだろうけど、円安にシフトしてきたら電気代としてしわ寄せがきて、お金というリソースも減る(これは個人の生活レベルでもインパクトがある)。

電力を使いそうな研究は不確定だからといって、人も集まらなくなる。

それでも研究費のある範囲で研究を続けるのはありだけど、競争が激しい分野だと、少ないリソースで独自性を出すのは極めて困難な状況になる。

トヨタの社長が日本でのものづくりの限界を感じはじめているといっていたけど、一部の研究分野はその状況なのかもしれない。しかも、簡単に研究場所をシフトするわけにはいかない。

来年夏、電力供給量がホントに不足し始めたら、電力会社は本気で計画停電に踏み切るだろうから、電力にそこまで依存していない分野も影響を受け出し、生産性が低下する(リスクがある)。

そんな中から日本独自の何かがまた生まれてくると期待はしたいけど、それはそれで不確実かつ大きなリスクの伴う選択だというのは確か。このジレンマは何とかならないものか。。。

一年

グラスゴー生活がスタートして早いもので1年経過。

まず仕事関連。
各種ペーパーワークを片付け3つ小グラントを当てたりとポジティブな側面もあったけど、やっぱり大きなグラントにはまだ壁があったり、肝心のプロジェクトもまだまだ。とにかく次の一年は、結果をもっと意識していかないといけませんです。それから、ティーチングなる得体の知れないものがボチボチ。時間管理能力がますます問われそう。

全体的には、今まで体験したことのないことをいろいろ体験することになって、大変な部分もあったけど、基本的には自発的にものごとを始める・やるということが増えたか。その点で、モチベーションコントロールはやりやすい。ただその分、責任というものも増えてるんだろうなぁ、という気も強まっている。

ラボのミッションというものを度々意識するようにしてきたけど、基本的にブレなかったのは一応評価して良いか。これからは、次のレベルのことをもっともっと意識すべきなんだろう。

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プライベートでも、いろんな変化目白押しだったけど、基本的に周りの人たちが親切なのに非常に助けられた感が強い。全体としては、気候にさえ慣れてしまえば、非常に住み易いところだと思う。

各論としては、例えば会社(電力会社とかいったその手の類)。いろんな会社とやり取りする時、もちろん日本ほど良い対応はないけど、アメリカよりはましかな、という感じ(約束は大抵守ってくれる一方、それ以上を期待するのはNG、と言うと的を得ているか)。BTはひどい。。。けど、フォローは悪くはなかった。

食事に関しては、NJ州だとお金さえ出せば日本食材が手に入ったけど、グラスゴーでは若干限りあり。一方で、普通のスーパーで売ってる食材は、米国滞在中に行ってたレベルのスーパーよりは品質管理をしてくれてる。レストランは市街にいろいろありそう。ただ、次女がもう少し大きくなってくれるまではやはりキビシメ。

気候。気温は年間を通して、涼しいから寒いのレンジで落ち着いている。暑い、と思った日はいまだ一日もない。。。汗をかく、ということがない。。。雨はよく降るけど、激しくふるケースは比較的レア。気温も降水量も変化が少ない。一方、逆説的だけど、24時間以内の天気は激動。風はよくふく。だから風力発電が盛んなのだろう。

それから、人は良いのだけれども、喫煙率が高いのは最大のネガティブ要因。バス通勤になって、バス停で待っていると大抵間接喫煙になってしまう。脳梗塞の率が高めだったりするのは、おそらくこの辺の超不健康生活習慣とリンクしているのだろう。

そのバス通勤を研究関連から補足すると、バス通勤は非常に良い。毎朝、バスに乗って市街地まで行く時間は論文を読み込むのにちょうど良く、しかも朝一番頭がスッキリしてる時間帯だから問題を考えるのにとても良い。論文を溜め込むことがなくなったのがこの一年での最大の変化の一つかも。

と、そんなグラスゴー生活一年。