2013年8月18日

夏終わり

スコットランドはすっかり秋モードで、気温は最高でも20度以下の日が続くようになり、イングランドより一足早く、子供の学校では新年度がスタートしてます。

ちなみに、今年の夏は、一時30度弱くらいまで上がる日が続いたり、2週間ほど傘いらずの日があったり、BBQをうちで何回かできたりと、こちらに来てから3年間で一番夏らしかったです(これでも)。

UK国内で最近の大きなニュースの一つはジブラルタル問題の再燃。
人工防波堤(?)の建設に腹を立てたスペインがジブラルタルの国境越えの待ち時間をわざと長くしたり、通貨料を課すぞと脅し、UKはそれに対抗し、「ルーチン」という名目で戦艦をジブラルタルに送ったり、EUにクレームしたりと、双方一歩も引かない状態が続いて盛り上がってます。ジブラルタルやら、フォークランドやら、UKもon goingな領土問題を抱えてます。。。

仕事関連では、新しいポスドクがそのスペインから来てくれました。サイエンスに国境なしではないですが、今のところ、ラボメンバー全員国籍が違ってます(たまたま)。体制的には、おそらくポスドク3~4人、大学院生2人くらいの1-3-2体制が当面は最もマネージしやすそうなので、それを維持していく必要があります。

ちなみに、6~9月の時期が一番研究に集中できる時期で、自分でいろいろ立ち上げができたりと楽しい時期でもあります。その分、今後夏休みをどう取って家族とのバランスを図っていくかは少し試行錯誤が必要そうです。

研究の立ち上げという点では、大学院生には、経験的に難しいところがあってどうしても非効率になるので、その辺は、自分自身でいろいろやってレールを敷いてあげるのが、ラボとしては良いと強く思う今日このごろ。と、大学院生を迎え入れることはかなり慎重に考えるべきだということにようやく気が付きました。。

2013年8月4日

世界大学ランキング

世界大学ランキングについて少し調べてみた。

3つ有名なランキングがあるもよう。
Times Higher Education(THE)のランキング
QS世界大学ランキング
Academic Ranking of World Universities(ARWU)

最初の二つは2009年まで同じだったらしく、THEは以降Thomson Reutersのデータも利用してランキングを算出している。

3つ目のARWUは上海ランキングともいわれてるらしく、ランキングのさきがけらしい。

ここでは、THEにとりあえず注目(理由はUKベースの雑誌が算出するランキングで、聞いたことがあったから)。

ただ、wikipediaには最新の情報が反映されていないので注意。

THEのランキングでは各大学を100点満点で評価してランキング。
以下そのブレークダウン。
詳細はこちらを。

まず以下の5つのカテゴリーごとに大学を評価
1. Industry Income
2. International outlook
3. Teaching
4. Research
5. Citations

各カテゴリーごとに、さらにいくつか評価基準があり、その各評価基準ごとに重みが付けられスコアを算出するもよう。

Industry Income
1つだけの評価基準。
企業からの研究資金収入をアカデミックスタッフの人数で割った値。

International diversity
3つ評価基準がある。
第一に、海外組・国内組スタッフの比
第二に、海外組・国内組学生の比
最後に、海外研究者との共著論文

Teaching
5つ。
第一に、reputation surveyなるものがあるもよう(重み高し)
第二に、アカデミックスタッフあたりの学生数
第三に、博士と学士取得者数の比
第四に、アカデミックスタッフあたりの博士取得者数
最後に、アカデミックスタッフあたりの大学総収入

Research
3つ。
第一に、Reputation survey(これまた重み高し)
第二に、研究費収入
第三に、スタッフあたりの論文数

Citations
Web of Scienceから算出される論文引用数インデックス

5大カテゴリーの重み付が興味深く、
Industry Income 2.5%
International diversity 7.5%
Teaching 30%
Research 30%
Citations 30%
という内訳。

これに基づき100点満点として評価するもよう。

ちなみに、Reputation survey、これはThomson Reutersが行うAcademic Reputation Surveyなる調査からの数字に基づいているらしい。

なんとなく胡散臭い。。。

ちなみに、最新のランキングでは
1.カルテク(米)
2.オックスフォード(英)
3.スタンフォード(米)
4.ハーバード(米)
5.MIT(米)
6.プリンストン(米)
7.ケンブリッジ(英)
8.インペリアル・カレッジ・ロンドン(英)
9.UCバークレー(米)
10.シカゴ(米)
がトップ10。米英独占。

日本はというと、
27.東大
54.京大
128.東工大
137.東北大
147.阪大
の5大学がトップ200位圏内。

ちなみに、ストラスクライド大は、ぎりぎりランクが付く351-400位(このカテゴリーでは細かい順位はついていない)。慶応と早稲田が同じ圏内。意外。。。

確かに、このランキングだけみると、日本の大学は苦戦している。どの大学もその半分くらいの順位で良いように思う。

もしもランキングを上げたいなら、まずはインパクトを上げる方法を考えるのが賢明かつ堅実だと思われる。

が、すぐに変化するものでもなさそう。というのは、Citationsやreputationがかなり重視されているので、一朝一夕で変わるものではない。

が、メチャクチャ論文を引用されている超有名研究者をヘッドハントする、というトリックはアリ。つまり、ノーベル賞受賞者をたくさん雇えば良い。大金をはたいて。

一方、International Outlookの重みは低いので、そこをターゲットにしても、順位はなかなか上がらない。なぜなら、総合点数への貢献度(重み)は非常に低いから。

例えばストラスクライド。International Outlookは63と、トップ10大学と肩を並べてる。。。

もちろん、日本の大学のInternational Outlookの低さは異常のようにも見えるけれど、国籍問わず、良い研究者・科学者を如何に養成・増やすか、というのがほとんどの評価項目にポジティブな効果をもたらし、ひいては大学ランキング上昇に貢献すると思われる。

トップ10の大学がそうしてるんだから、そんなことは自明のようにも思える。

2013年8月3日

3年

グラスゴーに移住してちょうど3年。

移住直後はいろいろありましたが、スコットランドの大学から生活まで、異文化の環境にそれなりに慣れてきました。今回はこの3年で学んだことを3つ。研究・大学関連にフォーカスして:

1.グラント制度
よく出来た制度だと思います。

まず、UKRCはいくつかカウンシルを持ってますが、それぞれに独自の戦略をしっかり決めていて、グラント申請書を書き分けやすいのが一つ。

第二に、国外研究者にも依頼しながらpeer-reviewし専門家の意見を仰いだ上で意思決定する審査制度。研究者への負担を上手く分散しながら、良い研究に投資しようという姿勢が伝わってきて、規模は小さいながらも、UKのレベルを長年保っているのが何となく頷けます。

グラント申請書書きは嫌、と言う人は多いですが、サイエンスのやり方を身を持って学ぶ良い機会だと個人的には思ってます。つまり、科学者養成の役割も果たしている。

また、ソースという点では、チャリティー系、EU系ソースへのアクセスも可能で、厳しい厳しいと言いながらも、みんな何とか生き延びてる印象です。

Wellcome Trustの変革は、多くの人達には大打撃だったみたいですが、僕が来る直前に変わって、僕は以前を知らないので、コメントできる立場にはないです。超一流の研究者だけがアクセス可能なお金、それだけです。

それから、いわゆる産学連携を進めるための特別なソースも各カウンシルが用意していたりと、いわゆるトランスレーショナルな点もそれなりに意識して進めている印象です。UKというより時代か。

一方で、UK以外の欧州の一部はかなり深刻で、かなり悲惨な状況の国もあります。。。

2.職の安定性
働き出すまで半信半疑でしたが、UKにはアメリカ的なテニュアトラックはないので、一旦PI職に就くと無駄な精神的プレッシャーがないです。プレッシャーゼロ、ではないですが、適度なレベル。

もちろん、中には胡座をかいて戦力外な人も出てきますが、研究スペースは次第に奪われていき、ティーチング要員になっていきます。トップの裁量でクビなんていうことは聞いたことないです。

過度なプレッシャーのもとウソをつく輩出てきて全体にダメージを与える、よりはましかなという印象。

一方、給料は実績に基づく年俸制ではなく、毎年2,3%ずつ上がっていく仕組み。けど、結果を残すと、数ランク以上上がる柔軟性もあったりと、悪くないです。

ポスドクに関して。
ポスドク問題は、万国共通の問題です。厳しい。。。ポストがない・できない。。。

ただ、研究以外の職に就ける機会も少しはある、という印象です。
実際、グラント関連でメールを受け取る時、Drの肩書きの方からメールを受けとったり、研究機材を販売している会社の窓口もDrの人だったりすることが多いです。

最後に、大学院制度については、アメリカほどしっかりしてないので、研究者養成という点では、いろいろ問題があります。UKでPhDを取って、ホントに将来の安定につながるか、極めて疑問です(と自分が大学院生を見てることは棚にあげますが・・・)。

個人的には、PhDを取るならアメリカで、というスタンスは以前から変わってないというか、さらに強く思うようになりました。

3.アウトリーチ
国というよりそういう時代なのかもしれませんが、アウトリーチ・public engagementという発想はそれなりには根付いてるなぁ、という印象です。

BBCやガーディアンでは良い記事が多いし、バスなんかで無料で配布されてる日刊紙にも、科学関連の意外としっかりした記事がごくたまに載ってたりします(多くはゴシップ系記事ですが)。

チャリティーのウェブを見ると、わかりやすいしっかりした情報が載っていたりして、一般の人からすると、その気になればいろんな情報にアクセスしやすい環境が整っている方だと思います。

ローカルなレベルでは、近くのグラスゴーサイエンスセンターのショーは、メチャクチャ良くできていて、子供から大人まで楽しめ質がかなり高いです。

大学レベルでは、キャリアパスという観点からか、大学院生にアウトリーチ活動に関わってもらうイベントもあったりして、近くの小学校に行ったりしてます。

ちなみに、僕はそういうのにはまだ全く関わってません。。。

以上、まとまりはないですが、3点。

他にも生活関連のことで学んだ・知ったことはいろいろありますが、総合していうと、UKなりUKの中のスコットランドの住み心地は予想より良い、というのが感想です。それだけ慣れた、ということなんだと思います。