2013年8月3日

3年

グラスゴーに移住してちょうど3年。

移住直後はいろいろありましたが、スコットランドの大学から生活まで、異文化の環境にそれなりに慣れてきました。今回はこの3年で学んだことを3つ。研究・大学関連にフォーカスして:

1.グラント制度
よく出来た制度だと思います。

まず、UKRCはいくつかカウンシルを持ってますが、それぞれに独自の戦略をしっかり決めていて、グラント申請書を書き分けやすいのが一つ。

第二に、国外研究者にも依頼しながらpeer-reviewし専門家の意見を仰いだ上で意思決定する審査制度。研究者への負担を上手く分散しながら、良い研究に投資しようという姿勢が伝わってきて、規模は小さいながらも、UKのレベルを長年保っているのが何となく頷けます。

グラント申請書書きは嫌、と言う人は多いですが、サイエンスのやり方を身を持って学ぶ良い機会だと個人的には思ってます。つまり、科学者養成の役割も果たしている。

また、ソースという点では、チャリティー系、EU系ソースへのアクセスも可能で、厳しい厳しいと言いながらも、みんな何とか生き延びてる印象です。

Wellcome Trustの変革は、多くの人達には大打撃だったみたいですが、僕が来る直前に変わって、僕は以前を知らないので、コメントできる立場にはないです。超一流の研究者だけがアクセス可能なお金、それだけです。

それから、いわゆる産学連携を進めるための特別なソースも各カウンシルが用意していたりと、いわゆるトランスレーショナルな点もそれなりに意識して進めている印象です。UKというより時代か。

一方で、UK以外の欧州の一部はかなり深刻で、かなり悲惨な状況の国もあります。。。

2.職の安定性
働き出すまで半信半疑でしたが、UKにはアメリカ的なテニュアトラックはないので、一旦PI職に就くと無駄な精神的プレッシャーがないです。プレッシャーゼロ、ではないですが、適度なレベル。

もちろん、中には胡座をかいて戦力外な人も出てきますが、研究スペースは次第に奪われていき、ティーチング要員になっていきます。トップの裁量でクビなんていうことは聞いたことないです。

過度なプレッシャーのもとウソをつく輩出てきて全体にダメージを与える、よりはましかなという印象。

一方、給料は実績に基づく年俸制ではなく、毎年2,3%ずつ上がっていく仕組み。けど、結果を残すと、数ランク以上上がる柔軟性もあったりと、悪くないです。

ポスドクに関して。
ポスドク問題は、万国共通の問題です。厳しい。。。ポストがない・できない。。。

ただ、研究以外の職に就ける機会も少しはある、という印象です。
実際、グラント関連でメールを受け取る時、Drの肩書きの方からメールを受けとったり、研究機材を販売している会社の窓口もDrの人だったりすることが多いです。

最後に、大学院制度については、アメリカほどしっかりしてないので、研究者養成という点では、いろいろ問題があります。UKでPhDを取って、ホントに将来の安定につながるか、極めて疑問です(と自分が大学院生を見てることは棚にあげますが・・・)。

個人的には、PhDを取るならアメリカで、というスタンスは以前から変わってないというか、さらに強く思うようになりました。

3.アウトリーチ
国というよりそういう時代なのかもしれませんが、アウトリーチ・public engagementという発想はそれなりには根付いてるなぁ、という印象です。

BBCやガーディアンでは良い記事が多いし、バスなんかで無料で配布されてる日刊紙にも、科学関連の意外としっかりした記事がごくたまに載ってたりします(多くはゴシップ系記事ですが)。

チャリティーのウェブを見ると、わかりやすいしっかりした情報が載っていたりして、一般の人からすると、その気になればいろんな情報にアクセスしやすい環境が整っている方だと思います。

ローカルなレベルでは、近くのグラスゴーサイエンスセンターのショーは、メチャクチャ良くできていて、子供から大人まで楽しめ質がかなり高いです。

大学レベルでは、キャリアパスという観点からか、大学院生にアウトリーチ活動に関わってもらうイベントもあったりして、近くの小学校に行ったりしてます。

ちなみに、僕はそういうのにはまだ全く関わってません。。。

以上、まとまりはないですが、3点。

他にも生活関連のことで学んだ・知ったことはいろいろありますが、総合していうと、UKなりUKの中のスコットランドの住み心地は予想より良い、というのが感想です。それだけ慣れた、ということなんだと思います。

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