2011年2月26日

ライティングコース、スタッフミーティング

今週火曜日に、アカデミック・ライティングのコースがスタート。隔週で開催され5月中旬頃まで。

英語能力の中で死活問題になるのはやはりライティングだから、その辺は藁にもすがる思いで何でも良いから役立つことは学びたい。

このコース、元ジャーナリストの人とライティング関連のPhDをとるために仕事をしている中年女性二人が教えてくれるコース。

学内からいろんな分野の人たちが生徒として参加していて、全体で15人くらいのコース。

基本的には、各自on goingの書き物を仕上げていく、というリーズナブルなアサインメントで、補足的なアサインメントも最小限で良い感じ。

一回目は、導入ということもあって、参加者の自己紹介、コースの概要説明に大半の時間が割かれた。参加者の中には、教科書執筆中という人もいてた。

後半、フリーライティングなるものをやった。

お題は「このコースで取り組みたい課題」で、5分間手書きで文字通りフリーに書いていくというもの。ちょうどブログを書くような感じか。

その後、フリーライティングに関するdiscussionになった。その逆のまずアウトラインをしっかり決めてから書いていく戦略との対比などが話題になった。ボトムアップとトップダウンという感じか。

フリーライティングは、全く筆が進まない時は良いかもしれないけど、グラント申請書や論文書きでどれくらい機能するんだろう?という気はした。まぁ、人にもよるところも大きそう。

同じ日の午後には研究所内のアカデミック・スタッフ・ミーティングなるものがあって参加。PIと言ってもかなりの数がいてるから、セミナー室がそこそこうまるくらいのミーティングだった。

研究所長だけでなくdeanさんも参加して大学の現状報告的なミーティング。

メイントピックはやはり財政関連か。

学内で100ポスト削減する必要があるらしく、僕がいてる学部でもそれなりの負担は不可避とのこと。。。定年退職で抜ける分もあるらしいけど、それ以外をどうするか協議中らしい。probationary periodの我々にも試練が待ってるのやもしれん。とにかく、クビをきられてもできるだけ早く次の職を見つけられるよう業績を残さないと生き残れん。なかなか厳しいけど、企業の場合、寝耳に水的に大量解雇とかあるだろうし、こういうご時世ではそういうものとして受け入れてfitnessを上げていくしかないのだろう。

今週他には、知らない間に来週火曜に来るお客さんのための紹介スケジュールに10分プレゼンを入れられていて、「それ聞いないし」という理由でnoと言ったり(noと言えた!)、今秋からの学生さんリクルート関連の仕事があったり、グラント申請書の仕上げフェーズに入ったり、花粉症か風邪かよくわからない状態になって体調が優れなかったりといろいろありました。

最近は日も長くなってきて、寒くない日が増え、二日実験・三日デスクワークというペースで働いてます。

それから、今日一応tax returnのfileを電子申請。もし問題なければ昨年アメリカで払いすぎてた分、戻ってくるはず。

2011年2月20日

UKの大学院

木曜日、大学院のヘッドの人から、大学院生リクルートに関していろいろ話を聞いた。この1,2ヶ月で大まかな流れがわかってきたのでちょっとまとめてみます。

UK
では、基本的には学生さん自らお金を当てて来るか、ボスがstudentshipを当てて、そこから学費・給料・一部の研究活動費をまかなう。

特徴は、studentshipの制限か。

一部の
studentshipはビザのいらないUK居住者のみ、UKEU居住者のみ、という制限があって、例えばインドや中国からアプライがあっても、そのstudentshipを使えない。それから学費の額も違ってくるので、結構やっかい。


学生の候補者を募集について。
大学なり研究所のウェブ、もしくはfindaphd.comで宣伝をするのが普通らしい。findaphdは、膨大な宣伝が掲載されているのに、検索機能が充実しているとは言い難いので、宣伝する側・ラボを探している側、両者にとって使い勝手が悪い。非常に。

ということで、僕の場合、
FENSでも宣伝してみた。そしたら一気にアプリケーションが増えた。しかも神経科学のバックグランドを持ってる人たちから。他にはUKの神経科学学会BNAでも宣伝できるらしい。が、まだBNAの会員になってないので、まだ載せてない。NeuroJobsなんかに載せても良いのかもしれないけど、お金がかかるし、とりあえずのところFENSは無登録のまま簡単に掲載できるので、これで十分な気もする。

宣伝してアプリケーションから候補者が絞れたら、うちの研究所の場合、エントリーサイトにサブミットしてもらい、スタッフが資格チェックをするらしい(ちゃんと修士を取ってるかどうかとか)。

そして、インタビュー、オファーという流れ。

大学院生活そのものは、基本的には10月1日スタート。

大学院に入ると、基本は
thesis提出が大きな目標だけれども、研究者として基本的なノウハウとなるトピック(プレゼンとかレポート書きとか)をいくつか学ぶもよう。

基本は3年。

studentship
は3年だったりするから、3年でPhD取れるよう、ボスとしてもいろいろ工面するのだろう。

ちなみに、その
studentshipは、アカデミアどっぷりというのももちろんあるけど、企業とのリンクを重視したものが結構多い。PhDのキャリアパスを多様化させる狙いもあるのだろう。そういったstudentshipでは、あらかじめ企業を特定して、その企業に負担金を一部お願いするケースもある。その場合、3年ではなく、4年、という場合もある。

UK
全体のものもあれば、スコットランド独自のstudentshipもある。

FENS
で宣伝し始めて1週間。想像以上にアプリケーションがきてる。みんな同時にたくさんアプリケーションを送っているとはいえ、ありがたい話。ぜひとも共に研究してくれる良い人材を発掘したいところ。

2011年2月12日

闘い

ここ2週間、UKの神経科学業界では暗いニュースが続いている。

まず、ファイザー工場閉鎖。

ヴァイアグラを開発した工場らしく、文字通り萎えるニュース。やっぱりこの手の製薬会社の研究所が閉鎖されると神経科学にもそれなりのインパクトがあるもよう。実際、製薬会社とコラボしているという人はいてるから、その辺とのリンクがなくなると、金銭的なサポートはもちろん、成果を薬開発などにつなげる道がさらに遠くなる。

二つ目はBBSRC(UKの生物系研究をサポートする政府機関の一つ)の神経科学予算削減のニュース。

BNA(UKの神経科学学会)を中心に、今週アピール活動が盛り上がり、昨日・一昨日は各種メディアでも取りあげられていた。僕はまだ学会メンバーになってなかったけど、一応アピール・メールを送った。こういうのは、とにかく一人でも多く参加しないといかん。ちなみに、ホントかどうかしらないけど、30強のラボが閉鎖されるインパクトがあるらしい。。。(一方で、もう一つのMRCの神経科学予算、実は増えはする)

とにかく、こういう厳しい時は、目的を見失わずしっかり仕事をしないといけません。

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ということで、火曜日にグラント申請。

今回のはスコットランド内のグラント。年2回公募があり、前回は研究所で少なくとも2人当てていた。額は少ない。

事務所はグラスゴー市内。歩いて事務所まで行って申請してきた。14部分の申請書が封筒に入らなかったので。。。

crossed fingers...

ちなみに、これで申請中グラントは4つに。
春までにあと2つ申請予定。
とにかく全滅だけは避けねば。

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火曜日午後、probationary periodに関するミーティング。

2週間前に自己評価的なペーパーワークをやって、それについて、メンターがコメントするという主旨。

半年しか経ってないのに一回目のレビューだから、レビューもへったくれもない。

とりあえず、頑張ろう、くらい。。。

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木曜日は二つ重要イベントが。

まず午前中、Wellcome Trustの人二人が研究所でトークしてくれた。とりあえずNew Investigator Awardsを目指さないといけないのだろうが、申請書を書く暇があったら、しっかりラボを軌道に乗せることに専念しないといけないな。

ちなみに、万が一当てられたら年間最大400k強、7年間というサポート。flexibilityを強調していたので、どんな目的にもお金を使え腰をすえた研究ができるもよう。とりあえず、独立して5年間チャレンジできるので、良い目標。

夕方前に、隣の研究所に行って人と会う。

相手は3人。

今回会った人たちの情報は、グラスゴーに来る直前、Deanさんから教えてもらいぜひとも会いたいと前々から思っていたグループ。数日前に僕からメールを書いたら、良い返事がきてついに会えた。(ナンパ成功!)

相手も僕のことをすでに知っていたようだった。短い時間だったけど良い会話ができた。

コラボに発展しそうな雰囲気。

モチベーション俄然アップ。

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昨日、ようやく学生募集広告がfindaphd.comなるサイトに掲載されたもよう。

UKかEUの学生なら学費全額支給のプロジェクト。スタートアップ資金の一部。

はじめてこういう立場になるわけだけど、ジョブ申請書は、公募に合わせてしっかりカスタマイズしないと駄目なんだろうな。。。空気を読んで答えるように。。。

2011年2月6日

viva

金曜日、その学位審査の内部審査員を体験したので備忘録として。

学位審査のことをUKではvivaと言う。

UKの他大学は知らないけど、僕がいてる大学では3人の役員?がまず指名された。

一人目はexternal examiner。他大学のその道のプロ。vivaでは中心的役割を果たす。

convenorはvivaの進行役。ベテランPIだったけど、分野は違っても良いもよう。質問をするとかではなく、とにかく進行役。

そしてinternal examiner。学内審査員。学位論文を読んで、viva中、external examinerの援護射撃?というか質問をPhD候補者にたくさん浴びせる。さらに、学位論文修正の監査役も勤めるもよう。今回このinternal examinerに指名された。

PhD候補者は、同世代PIのラボの学生さん。その同僚は3年くらい前に独立したばかりで、今回の候補者は記念すべき第一号の学生さんだった。

時系列としては、まず12月上旬頃だったか、同僚からinternal examinerしてくれない?と依頼を受ける。

おそらく数人のうちの一人なんだろうと思って、即答でOK。

いろいろ聞いていくうちに、上述のような構成でvivaが行われることが判明。

学位論文は、年末頃受け取れるだろうと聞いてたけど、実際受け取ったのは1月中旬。しかも270ページの長編論文。。。

毎日少しずつ読んで、2週間くらいで読み終わりプレレポートを提出。形式はよくわからなかったので、とりあえずpeer reviewみたいな感じでレポートを提出。

そしてviva当日。

まずvivaを仕切る上述3人が12時過ぎごろ集まった。

external examinerはUCLのPIで、わざわざ日帰りでロンドンから来てくれた。convenorの人はホントに司会だけが仕事みたいで、学位論文すら読んでなく、とりあえずexaminer二人でどうvivaを進めるか少しだけ打ち合わせ。

問題点はシェアできてたので、打ち合わせは5分くらいだったか。

それからconvenorの人が候補者を呼びに行って、vivaスタート。

はじめconvenorの人が、儀式として、「もしもbiologicalに駄目だと思ったらいつでも言って休憩して良いから」と。。。

あとはexternal examinerさんがリードしながら進んでいった。

まず大きな観点から質問を始めて、学位論文のコンテンツに踏み込んでいくという感じで進む。候補者は別にプレゼンするわけではなく、質問にとにかく答えるという形式。

2時間くらい続いたか。

一通り質疑応答が終わった後、候補者には一旦部屋から出てもらい、3人でどう意思決定を下すか話し合った。

あらかじめ用意されたチェック項目があって、それをパスしてたか答え、最終結論。

最終結論はいくつかカテゴリーがあって
1.ぶっ通し
2.minor revision
3.major revision
4以下はほぼreject
といった感じ。

2に。(お約束?)

examinerがフォームにサインして、候補者に結果を伝えられ、総括的なコメントを伝える。

最後に、候補者、そして候補者のPIも加わって少し話をする。同僚PIも喜んでいた。

新しいDr誕生。


ちなみに、external examinerさんと一致した感想としては、学位論文は穴が多かったけど、viva中の応答は非常に良く、そのギャップが大きかった、ということ。

なので、そのギャップを埋めるべく、学位論文をしっかり修正して、論文として発表すべき部分はしっかりして、良いサイエンティストの道を歩んで行って欲しいところ。4月からのポスドク先も決定しているもよう。

と、そんな感じのvivaでした。

USの時にいてたラトガーズでは、internalのコミッティーは3,4人。外部者が一人で、まずトークがあって、その後はcloseの”defense”だった。

一方、僕が体験した日本での学位審査は、一日に数人候補者がいてる状況だったので、スケジュールをこなす、という感じだった。一人あたりの時間も30分くらいだったか。日本の「博士」の重さと相関しているといえば相関している。。。

と、国によっていろいろ違うんだなぁ、と改めて思った。

USでは、候補者のご両親が当日来られ、結果がわかった後パーティー、という感じだったけど、UKではそこまで重くなく、viva後は、学生さん同士でちょっと騒いでるくらいでオフィシャルなパーティーは別に企画されてない。日本とUSの間、という感じ。

今回担当したinternal examinerはそれなりに負担があった。学位審査を引き受けた以上、いくら分野が少々違っても論文を完全に理解して質問を用意しないといけない。最後は、どう学位論文を手直しするか監督しないといけない。

今回読んだ学位論文、ホットな分野だけど僕はほとんど知識を持ち合わせてない分野だったので、えらく勉強になった。一方、質問が的を得てるか確信を得るため、わざわざpubmedで最近の文献もチェックしたりしたので、それなりの時間はかかった。

けど、これはサイエンスの活動の一環だし、意外とエンジョイできた。これなら、これからも引き受けて良いかも?

一方、external examinerになると、経験がいりそうだから、まだまだ僕には無理。。。