今週のインタビューについて。
準備フェーズ
インタビューのお呼びがかかったのはケンにアドバイスを仰いだ日。電話ではなくメールでの連絡だった。
トークの準備はパリの直後からスタートし、one-on-oneのインタビューの予習もあわせて開始。(ちなみにアメリカのジョブインタビューは、2日間からなって、トーク1時間くらい、あとは10人くらいのファカルティーと個別面談していく、という形式が一般的)
トークについては、ある程度ストーリーが固まって、何度か練習したタイミングで同僚のフィードバックを仰ぎ、問題をフィックスして、あとはスクリプトをひたすら暗唱。毎朝、誰もいない時間帯に本番を想定しながら、声のトーンも含めて毎日練習。さらに、やや言葉が詰まりがちな部分を午後などに頭の中で練習して補強。通し練習を20回はやったはず。。。スクリプト作りから考えたら、45分くらいのトークに、数十~100倍の時間をかけたのではないか。
トークのコンテンツは3本立て。論文になったネタ20分、未発表ネタ10分、将来プラン10分。チョークトークは予定されてなかったし、相手は将来を知りたいだろうと思って、将来プランを長めに(それが良いかどうかは知らんけど)。将来プランは、大きな問題意識と、とりあえずグラントを取るならこのネタで勝負、という感じで、グラント書きを少し意識した構成に。
one-on-oneに関しては、相手の研究だけでなく、自分の現在と将来の研究を手短に話せるように用意して、こちらからの質問、想定質問に対する回答もできるだけ用意した。結局、使わなかったけど、アイデアリスト、ラボプランやウィッシュリストも一応用意した。直前の2週間くらいは土日も休み返上で半日だけ図書館にいったりして、それなりにハードワークはした。(結果から言うと、多くのケースで想定外の方向に進んだ。ただ、だからと言って準備が無駄になったわけではなく、あらゆることを想定した準備が必要だということがよくわかった。つまり、one-on-oneミーティングは奥が深い。)
ちなみに、スケジュール表は意外と早く送られてきて、まず3週間前(パリ直前だったか)には第一バージョンが送られてきた。そのバージョンでは、トークが1日目8時台に予定されて、ここの人たちはみんな早起きなんやなぁ、と関心。。。が、やはり他のファカルティーからのアドバイスで数日後にバージョン2が送られてきた。
そして、直前の5日金曜日に事務系のメアリーさんから電話がかかってきて、確認・質問などをする。
それから、1週間前には、イエールさん(以下詳述)とインタビューに関することでやり取りをした(これは準備として非常に有用だった。How-to本によると、呼んでいる側は、呼んだ人がしっかりパフォーマンスしてくれることこそが重要だそうで、わからないことはあらかじめ聞けばむしろ積極的に教えてくれるケースもあるもよう)。
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日曜日(前日)
スーパーサンデー。
朝早めに起きてトークの練習と最終チェックをして、朝食後、ラトガーズへ。で、前回のエントリーをアップ。
昼過ぎAmtrakでニューアークからフィラデルフィア(以下フィリー)へ移動。近いから1時間ほどで到着。電車だからセキュリティーチェックもないし楽チン。
前日、スノーストームが東海岸を襲って、NJ州北部は全然雪が降らなかったけど、南下するにつれ積雪量が増え、フィリーはかなりすごいことになってた。。。当初は、駅からホテルまで観光がてら歩こうかと思ってたけど、積雪の状況を見て即断念。タクシーで移動。
ホテルはInn At Pennというヒルトンのホテルで、ペン大キャンパスの一角?に位置してるきれいなホテルを用意してもらっていた。
部屋はツインで普通に良い部屋。
下見も兼ねてホテルから翌日の待ち合わせになる病院のロビーまで歩き、キャンパス内を少しだけ見学。近代的なビルと歴史を感じるきれいな建物が共存していて、良い感じのキャンパスだった。
1時間弱で戻っては、トークの練習など。
ディナーは、ホテル内のイタリアンレストランへ。食事もすべて出してもらえると聞いていたので、30ドル弱のサーモンをいただく。。。激ウマ。(ごちになりました)
部屋に戻ったらちょうどスーパーボウルのキックオフが迫っていて、前半はしっかり観戦。前半終了間際、セインツのリスキーなプレー、それが失敗してこれで勝負アリかと思って、ハーフタイムショーと第三クオーターはスキップ。シャワーを浴びたり、少し予習をしたり。
第四クオーター開始直前からまた見始めたら、点差がつまってた。。
そして、終わってみればセインツの圧勝。。。後半、セインツのオフェンスとディフェンスの歯車がかみ合ったのだろう。ショッキー、今回は試合にも出れて、さぞやうれしかったことだろう(2年前は怪我で見てるだけやったもんな)。良いプレーもしてたし。
就寝。
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月曜日(一日目)
朝起きて、まずトークの練習。
朝食はホテル内のレストランでブッフェ形式の朝食を。あまり選択肢がなかったのに、20ドル弱もした。。。自腹ではないとはいえ、あれは高すぎ。。。
朝は、やはり独特の緊張感があった。ホントにこれから受験本番に臨む時のような感覚といったら良いか。
8時45分にメアリーさんと大学病院のロビーで待ち合わせ。
メアリーさんはファカルティーの事務系の仕事を一手に担ってる女性で、インタビュー期間、場所の移動など、あらゆる事務的なことをサポートしてくれた。1時間くらいおきに、場所を転々とするスケジュールだったので、その都度、僕をピックアップしては次のところへ連れて行くという仕事をこなしてくれた。ホントにありがたい存在でした。
まずはイエールさんと1時間半のミーティング。
もしも(万が一?)オファーをもらって行けることになったら、彼とは密に連携をはかりつつ、メンター的な立場にもなってくれるであろう人。大学、ディパートメントのことなどを詳しくいろいろ教えてくれ、将来のラボスペースも一通り案内してくれた。メチャクチャフリースペースがあったな。。。
その後、少しだけ研究の話もして、キャンパス内のカフェへ行って、コーヒーを飲みながら世間話をしたり、補足的な情報をいろいろ教えてもらった。イエールさんとは同じフィールドだから少しだけ面識はあったけど、こうやって話すのは初めてだった。気さくで親切で非常に良い人だった。
次はマークさんと45分。
マークさんは違うモデルを使ってるけど、興味が近くて、研究の話で大いに盛り上がり、あっという間にタイムアップ。。。マークさんも「良い人オーラー」を出してる人だった。
次からがこの日の修羅場オンパレード。。。
まずは、アプライしたディパートメントのお医者さん二人と小さい部屋でランチを共にする。
ウィリアムさんは、ご年配の方で、フィリーには30年くらい住んでいるそうで、フィリーの生活についてかなり詳しく教えてくれた。もう一人のマイケルさんは、かなり遅れての参戦になったけど、すぐ突っ込んだ話になって、かなり「バトルモード」の会話に。ウィリアムさんの目の色も変わっていて、この辺はさすがにプロだなぁと思った。。。
そして、ディパートメントのチェア、バートさんとの面談。
研究所のチェアというより、社長さん・CEOといった感じで、超多忙なのか、30分だけの時間しか割り当てられていなかった。まず簡単に僕のCVのことを確認し、時間が限られているから、僕から「将来」のことを切り出した。日本人に知り合いがいると言われていたし、日本人は英語ができないことを重々承知の上で会話を進めてくれているように感じた。それが良いかどうかはともかく、このバートさんという人は、僕がこれまで会ってきた人の中で極めて異色の人物だというのがすぐにわかった。大きい組織をマネージする人・すべき人というのは、こういう人物のことなんだなぁ、と思った。
次は、神経科学の大学院のチェア、リタさんとの面談を45分。
研究の話が主で、後は大学院なり大学での神経科学関連の話をする。きれいな女性で、情熱が伝わる迫力のある話し方をする人で、やはりチェアになるような人は、ホントにオーラが違うなぁ、とここでも感じた。。。
そしてこの日最後は、若手から中堅PIでもあるジョシュさんとの面談を45分。
まずはこの日行く予定のファンシーレストランについて小ネタを教えてくれた。。。その後は研究の話を。今回のインタビューで最も楽しみにしていた人の一人だったので、ongoingの話も含め、いろいろ彼の考え・本音などを聞けた。彼はケン・タイプだな。頭が切れるのがよくわかった。しかも非常にわかりやすく説明してくれた。アナロジーを使わず直球で勝負してくるところはケンと違うところか。。。僕の研究の話をしている途中でタイムアップになった。
その後、再びイエールさんのオフィスに行って、ラボスペースの図面をもらったり、この日の様子を少し報告したり、あとついでに、今の僕の「状況」についても話をして、ホテルまで送ってくれた。
ホテルに戻ったのは4時半過ぎだったか。
6時半に待ち合わせてディナーへ行くことになっていたので、時間があって、とりあえず嫁さんに電話で報告する。
そしてディナー。
まずホテルでイエールさんとディエゴさんと会い、一緒にタクシーに乗って移動。途中、フィリーのダウンタウンを通ったけど、なかなかきれいで、よさげな都会という感じだった。みんなが褒めるのも納得。
ディナーの面子は、バートさん、イエールさん、ケリーさん、そしてディエゴさんの5人。場所はVetriなるスーパーファンシー・イタリアンレストラン。
白・赤の(たぶん超高級)ワインをそれぞれボトルで頼み、アペタイザーとメインとデザート(シェア)を頂く。たぶん、一人3桁はかかってたはず。。。こんなところに行く機会は、人生で数回しかないのかもしれない。ウェイトレスのお姉さんも超美人やったな。。。みんななかなか注文しないから、ちとムッとしてたが。
それにしても、こういうディナータイムが僕にとっては一番きつかった。。。会話についていくだけでも大変な上に、自分から話題をふって場を盛り上げるなんて芸当は日本語でもきついから、ホントにタフな時間帯となった。しかも、そういう自分を評価されているんだろうなぁ、というプレッシャーを感じながらの食事だったから、ファンシーレストランもへったくれもなかった。。。少し薄暗いマクドでも別に良かったやもしれん。
ちなみに翌日、イエールさんとも話題になったのだけれども、ディナーの途中、バートさんがディエゴさんに、僕の研究の質について直接尋ねていた。。。こいつ(つまり僕)の研究は君からみてどうよ?と。。。そりゃ、100ドル弱するワインの酔いも忘れるわ。。。幸い、ディエゴさんは僕の論文をしっかり読んでくれていたようで、ウソかホントかはともかく、即答で、かなり味方になってくれていた。ありがとう、ディエゴさん!
と、2時間くらいのこの日一番の修羅場を、無事かどうかはともかく、とにかく終え、タクシーでホテルまで。部屋に戻ったのは22時頃。シャワーを浴びて即寝。
人生屈指のインテンスな一日だった。。。
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火曜日(二日目)
朝起きて、またトークの練習。朝食は前日と同じビュッフェ形式の食事。
この日のスタートは少し遅めで9時45分にメアリーさんと待ち合わせ。
まずは、ジョナサンさんとの面談。この人は、ニューロサイエンスディパートメントのチェア(どうでも良いけど、インタビュー中3人もチェアと会うことは普通なんだろうか。。。)。
彼は、この日に予定されている僕のトークに、授業のために参加できないとのことで、ラップトップを開けてプレゼンさせられた。。。ジョナサンさんは発生の研究者なのだけれども、さすがというべきか、システム系の知識も豊富で、かなりディープな質問を連発された。。。やっぱりチェアになる人はタダもんじゃねぇ。。。結局、僕の研究の話だけで、45分が過ぎて次へ。
次は、ノームさんと45分。
この人とは分野は全然違うけど、ディパートメントが同じになる若手のお医者さん研究者の方で、非常に元気の良さそうな人だった。まず僕の研究のポイントを伝えて、将来の話も少しして、ディパートメントの強みについて語ってもらった。ノームさんには僕の英語が少し聞き取りにくかったのかもしれない。が、神経科学の現状の話をしたら、かなり興奮していたし、会話の途中でタイムアップになったし、良い会話ができたのではないか、という気は勝手にしている。
そしてジョブトーク。
オーディエンスにはもれなくフリーランチが用意されているというトーク。
そのランチ効果か、全部で40人くらい入るところに15人くらいという大盛況ぶり。(まぁ、有名じゃないんだし、ポスドクのトークなんてこんなもんだろうと、自分を慰める。。。)
練習をたくさんしたおかげで(あと人も少なかったから)、緊張はそれほどせず、オーディエンスとアイコンタクトもしっかりしながらトークができた。
トークが終わって、すぐに質問が出なくてちと焦ったけど、結果的には5,6の質問が来たか。質問の内容も、一応、メッセージは伝わったかな?、という質問だったし、全質問にも僕なりに答えられたし、全体的には悪くなかったはず。(トーク中のネタはスベリ倒したが・・・)
唯一の心配は、英語がどれくらい醜いと感じられたか?か。(かなり重要だが)
トークが終わったら、親切なイエールさんから、わかりやすくてよかった、と一言声をかけてはもらった。社交辞令なんだろうけど、唯一のフィードバックだったから信じることにしよう。
トークの後、次の予定まで時間があったので、セミナー室でランチを食べる。イエールラボの日本人ポスドクの方が来てくれて、いろいろ話をする(日本語で)。日本人がいるのは心強い限り。
その後もまだ時間があったので、メアリーさんに、時間までその辺ぶらぶらしてきて良い、と言われた。ただ、建物の作りは迷路のようにえらく複雑で、ホントにぶらぶらしたら戻れなくなるリスクがあったので、とりあえず1階のロビーのソファーで少しゆっくりする。
そして最後の面談者、エリカさんと30分の面談。
彼女はバリバリのお医者さんで、ちょうど診療中だったらしく、10分くらいの面談で終了。オフィスも、アメリカの大きめの病院ではよく見るような個室診察室が並んだ通路の奥にあって、実際、その通路を移動中、患者さんが診察室で待っていたり、ちょっとトラブルが起こってお医者さんたちが集まってる様子を見ることができた(良いんか?)。
全スケジュール終了ということで、メアリーさんにタクシー乗場まで案内してもらいお別れ。タクシーで駅へ。夕方からまたsnow stormが来るということで、実際、とんでもない雪だったので、ホントに良いタイミングにインタビューが組まれていて良かった。一日でも前後していたらどうなっていたのだろう。。。このラッキーさが結果にも反映されれば良いのだけれども。
ちなみに、その日、いくつかの列車はすでにキャンセルになっていて、僕が乗る予定の列車は20分遅れだったけど、何とか「愛し」のニューアークに無事帰還。
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ということで、アメリカの大学のインタビューなるものを体験したのだけれども、すごい。
CVを見て、プレゼン聞いて、ポジションが空いているから埋めるというのではなく、ホントにお互いをよく理解した上で、シナジーを生み出して全体がさらに強くなるような人を選びましょう、という感じ。研究業績を超越してヒトを見るんだなぁ、というのが痛いほど伝わった。しかも、双方向的だから、相手も相手の強みを伝えるべくどんどんアピールしてくる。もちろん、2日だけのインタビューだから、実際働き出したら、あら実は違った、とか、そういうのは出てくるとは思うけど、できるだけevidenceをお互い提供しあって意思決定しようという非常に合理的というかなんというか、ある意味あるべき人材探しのプロセスだな、と思った。アメリカのサイエンスがなぜ強いのか、一つの理由はここにもあるのかもしれない。彼らは大学院生を選ぶのにも人をしっかり見て選んでいる。穴を埋めるとか、空から降ってきたお金を使うために、とりあえずそこにいてた人を選ぶ、というのとは違う。カスタマーより、高性能・高効率のモノ作りの方が優先順位が高い一流企業とも違う。人が中心になっている。そして何よりも、戦略・ヴィジョンというのが明確。ディパートメントの強み・弱みをしっかり把握して、将来展望を考慮に入れながら今必要な人材を探し出そう、という意図が伝わったし、もしそこで働くなら何を期待されながら働くのか、そういうのが短期間でよく伝わった。新しい研究室一つにしても、それが属するシステムがより良いものとして機能するための一要素でもあり、新しいリンク、シナジーを生み出すことが期待されている。こういうのは、今まで感じることがなかったので、ホントに良い経験になった。
あと、インタビューにかかるお金は当たり前のようにすべて負担してくれる。交通費・食費(アルコール代も)・宿泊費、すべて。それで組織が良くなるかもしれないわけだから、数百ドルの投資なんて安いものなのだろう。目先の細かいことを気にして、大きなものを見失ったりはしていない。
他のケースではわからないけど、「家族はいる?」という、タブーと聞いていた質問も受けた。。。複数人から。。。かなり意外。。。良く言えば、柔軟(もしかしたら、薬指の指輪を見て、こいつならネタをふって良さそうだな、とか判断しているのかもしれない)。悪く言えば、テキトー。その辺のテキトーさが好きだったりもする。。。
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ちなみに、あと二人候補者がいてることがインタビュー中に判明。。。人生は競争。。。
昨日、フィードバックを聞いてみたら”extremely positive”とのこと。が、こっちの人たちには褒めてのばすことが根付いているので、日本人的には「悪くなかったよ」くらいの評価なのだろう(おそらく全員に同じ回答をするんではないかとは思う)。まぁ、negativeではないからよしとしよう。とにかく英語(特にシャベリ)ができないということも含め、今、僕が持ってるすべては出したので、これでダメだったら、良い夢を見させてくれてありがとう、という感じか。
結果は4月頃にわかるもよう。
長いな。。。
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