2014年3月30日

ティーチング2014

今年のティーチングが一段落したのでまとめます。
実は今年、去年の半分以下のdutyでした。

2年連続でサポート的な役割をしてた学生実習、今年は免除に(戦力外通告?)
さらに、去年5コマ任せられたクラスは、ネゴって4コマに。

ということで、今年は
1.細胞分子生物学 4コマ
2.生理学 4コマ
のみ。

1コマ45分なので、年間を通して計6時間。

どちらも学部2年生が対象。
細胞分子生物学では、顕微鏡関連と神経系を含む動物組織について、生理学では感覚系について(専門だから楽)講義。

前者は、5コマから4コマに少なくなった分、スライドを少し変更したけれど、生理学の方は今年で3年目だったからほとんど変更なし。ということで準備にかかった時間も短かったです。

あとは、卒論研究のサポートが5人分ということで、これはこれでそれなりの負担が。。。けど、こちらは、自分の意志で研究に貢献できるようなプロジェクトにできるので、こちらが多い分には何とかなるか。

レクチャーでの今年の変化は二つ。

まず、本年度から大学がPRS(personal response system)というシステムを導入したこと。
各学生が小さいリモコン端末を持っていて、スライドを使って学生に質問。そして、その回答をリアルタイムで集計するシステムのことをPRSと呼ぶ。学生さんもPRSの時間になると元気が出てきて、こちらもレクチャーをどれくらい理解してくれたか確認できるので、とても便利。使い方を工夫すれば、学生さんの集中力を途切れさせずに効果的にメッセージを伝えられそう。

もう一つの変化は英語。
今まで一回は通し練習してたけど、今年は直前にスライドの流れをざっと確認して、あとはぶっつけ本番。この1・2年でそれなりに英語力が上がった(気がする)。英語でトークすることへの抵抗感はかなり減った。英語がうまくなったというより、知ってる英語を引き出しやすくなった、という感覚。なので、小難しい英語は依然使えない。ということで、英語でのレクチャーも3年くらいやれば、それなりにできるようになるもよう。

ちなみに、同僚教授がこの3月でリタイアして「研究教授」という立場になるので、もしかすると、来年度は負担が増える恐れあり。。。

ちなみに、過去のティーチングのまとめは、2012分はこちら、2013分はこちら

2014年3月15日

スタップ細胞仮説から何を学ぶか?

捏造といったたぐいは、どこの国だろうと起こりうる。一方、アメリカやイギリスだったら、違う展開だっただろう、と思いながら、ニュースやソーシャルメディアを毎日フォローしてます。。。

日本ならではと思った点は、やはり最初の加熱報道の異様さ。結果的には、これが今の状態につながったと思われる。良い意味でも、悪い意味でも。

良い側面は、論文発表直後から多くのpost-publication peer reviewが行われ、再現性の欠如だけでなく、論文そのものの問題が比較的短期間にわかり、自浄作用が機能したこと。これに加熱報道が一役買ったのは確かだと思う。

発表から2ヶ月足らずでretraction当確の状態にまでなった論文なんて、少なくとも僕は知らない。

もしこれが10年前だったら、、、
間違った論文を多くの人が信じ続け巨額のお金が動いたりして、物的なネガティブインパクトは相当だったはず。(RIKENはすでに人事で物的な被害を受けてるけれども。。。)

ちなみに、論文発表前に防げなかったの?と家内に聞かれたけど、現状は非常に難しい。。。

もちろん、究極的にはシニア研究者のマネージメント問題だとは思うけれど、今回は、小保方さんが一人でいろいろ手がけて、彼女のprimaryな指導教官・メンター的な人がいたか非常に曖昧な雰囲気。笹井先生の具体的な貢献はよくわからないけれど、もしもネイチャー論文書き、という最後の部分だけの積極サポートが主な貢献だったとすると、差し替えられたデータをそのまま鵜呑みにしてしまう状況に陥られたのかもしれない(あくまで想像)。

ましてや現状のpeer reviewの制度で、レフリーが図の流用に気づくのは不可能。そもそもそんな視点で論文を審査しない。

とにかく学ぶべきことは、共同研究者間peer reviewの強化。

仮に共同研究的な関係であっても、自分のラボ内でやるのと匹敵する厳しい基準で共同研究者のデータを評価しないとだめ、ということなのだろう。甘い時は甘いと言い、元データを大切にすること。そして、自分の名前が論文に載る時はその論文に責任を持つこと。(共同研究者としての関係を崩したくないから、概して甘くなりがちで、あまりうるさいと嫌われそうだが。。。)

が、今の時代、見ても理解できないような元データを出してくれる人と共同研究を進めるケースが非常に多くなっているので、そう簡単な問題ではない。

一方、悪いインパクトは、、、、ニュースを見ての通り。

RIKENブランドが非常に傷つき、BBCでも報道されてるから、日本人研究者全体の信頼低下につながったと思われる。日本国民からだけでなく、世界の科学者からも。しかも関連ニュースは今後も続く。国内外で。

さらに、今後は信頼回復のための過剰な監視制度をひくことで、生産性が低下し、欧米・中国との厳しい競争でますます劣勢な状況に置かれるおそれがある。今の過当競争の状態はひどくなることはあっても、軽減される方向に行くとは思えないから。

とにかくネガティブインパクトは絶大。

小保方さん、もちろん今回の件、ホントに不正をしたんだったら、正直に、できるだけ早くしっかり精算すべき。けど、スタップ細胞仮説を提唱した点だけにおいては、彼女の独創的な発想を非常に買いたい。普通、そんなこと思いつかない。だからみんな熱狂した。

仮にRIKENのポストや博士号を返上しても、また一から出直し、10年後くらいに、やっぱりこの人すごかった、と言われるよう頑張ってほしい。30歳なら、これから10年で復活可能。日本では風当たりが強すぎて居心地が悪かったら、別の国で頑張れば良い。サイエンスの業界はそれができる。自分の意志で。

神経科学の分野でも、ノーベル賞受賞者と一緒に出した論文を後に取り下げ、そのノーベル賞受賞者を怒らせながらも、今は超一流の研究者として活躍している人もいる。

間違いは誰でもする。
そこから何を学んでどのような行動を取るかは人次第。

2014年3月9日

コミュニケーション

以前、デキる大学院生の要素の一つとして「交信」を挙げた。

そのコミュニケーション力に関連して、以下の3タイプについて考察。

1.頻繁タイプ
こちらからデスクに出向かなくても相手から来て直接進捗なり問題の報告を頻繁にしてくれるタイプ。基本的にはこのタイプが一番仕事がやりやすい。些細な事でも、逐一情報をシェアしてくれると、軌道修正もしやすいし、頻繁に情報交換でき最も効率的。

2.メールタイプ
そんなこと直接聞いてくれたら良いのに、と思うことでもメールで様子伺いなり、フィードバックを求めてくるタイプ。性格的に、シャイか遠慮しがちなタイプだと思われる。が、メールをタイプし始め、返事をもらって次のアクションに移るまでの時間と、足を動かし直接聞き、すぐに回答を得て次に移るまで時間の差が、例えば大学院の3年間積み重なると、相当な時間になる。遠慮しすぎるのはどちらにも良くない。

3.沈黙タイプ
そんな重要なこともシェアしてくれないのね、というタイプ。最もやりにくいタイプ。こちらが忙しいと、情報交換するのは週一のレギュラーミーティングだけになったりする。一週間経過した後で、重要なことのアップデートをもらい、何も進んでいない、もしくは誤った方向に行っていたりすると、ショック・ロスは大きい。。

自分が進んでいる方向に余程自信・確信を持っている場合を除いては(仮にそうであったとしても)、1のタイプがチームメンバーとして一番働きやすいです。

2014年3月2日

スコットランド独立について

一時帰国した時、よく聞かれた質問:
「スコットランドって独立するんですか??」

もちろん、現時点ではどっちに転ぶかわからないけれど、約半年後の9月18日の国民投票で結論が下され、もし過半数が”Yes”と言ったら、2016年3月24日にホントに独立してしまう。。。

こちらがオフィシャルな情報。
よくある質問と答えについては、こちらにまとめられている。あくまでスコットランド政府の見解なので、鵜呑みにしてはいけない。。。

wikipediaもある。日本語訳はないから、日本人にとってはほとんど関心のないことだと思われる。

ガーディアンの特設ページのRSSを登録しておけば、常に最新のニュースを知れる。

以下、もう少し具体的に。

誰が投票できる?

こちらにあって、基本、スコットランドに住んでる人たちが対象。今回は16歳以上が対象になる。しかし、CommonwealthやEUとも関係ない僕のような第三国からの移民は対象外。

現在の世論は?

最近の世論調査の結果はこちらこちら
UK全体で見ればもちろんNoが圧倒しているけれど、問題はスコットランド内。

一貫してNoが多いけれど、態度を決めていない人たちもまだたくさんいるので、半年後どうなっているか微妙な情勢。一番怖いのは、8・9月にAlex Salmondが今ある問題点への明確なビジョンなり回答を用意して、世論が大きく動くこと。

つまり、独立するのはunlikelyだけれども余談を許さない。

ヴィジョンの詳細
現時点のビジョンについては、こちらに分厚い冊子がある。ダウンロード可能だし、頼めばタダで送ってくれる。

ディベートネタ
いろんな問題が連日のように議論されていて、僕が理解している限り、以下の初歩的なことすら明確ではない:
・通貨はどうなる?(ポンド?それとも・・・)
・EUに即加盟できる?
・北海油田は誰のもの?
・BBCは?
・科学技術予算は?
などなどなどなど。

通貨については、最近、ジョージ・オズボーンが、ポンド使えるわけねぇじゃん、とcurrency union案を一蹴。pro-unionの人たちも加わってAlex Salmondいじめがスタート。

もしも独立するとしたら、残りのUKとスコットランドで、少なくとも短期的にはloose-looseのdealになるのは確実。

科学関連では、僕の理解が正しければRCUKのお金を当てにしてるらしい。。「独立」とは程遠いプラン。スコットランドは基本的に「応用」関連の投資ばかりしてきているので、独立したら多くの科学者がスコットランドを離れ、ただでさえ乏しい経済の原動力をさらに失うことになると思われる。

僕の立場は、100%No。
が、投票できないのが移民の悲しい性。。。