2011年12月31日

大晦日


今年の年末もグラスゴーで。

今年のPIとしての仕事を振り返って、まず資金繰りという点では、小規模グラント3つとMRCを獲得。いくつか失敗を経験できたので、来年以降はそれを活かしたい。政府系グラントをもう一つ当てる必要あり。

その他のマネージメント業。
プロジェクト開始のためのペーパーワークをひと通りクリア、装置系の初期セットアップ完了、良いコラボ相手も見つけることができた。リソース用意・ネタ仕込みという点では、ゆっくりではあるけど、それなりに進展が見られた。

来年はとにかく結果、結果、結果。

チームとしてのラボ運営としては日々試行錯誤。。。
例えば、大学院生のように経験値が圧倒的に不足している人材をどうリードしていくべきかいろいろ難しい。これまで放任主義な環境で生きてきたので、放任主義を貫きたい部分はあるけれど、そのスタイルだと生産性がおそらく伸びない。失敗してから学ぶわけにはいかないから、問題が顕在化する前から努力する必要あり。来年は数人メンバーを増やすことになるから、大きな努力目標。

ネットワーキング系では、オックスフォードでトークできたのは良い思い出になった。SfNの学会でも少しだけネットワークを広げることができた。来年秋ごろ、とあるイベントでトークさせてもらえることになったから、こういう機会を利用してvisibilityも少しずつ上げていきたい。(そんなことより論文)

ティーチングに関して。
チュートリアル・採点・試験監督程度で済んだ。卒論・卒研の担当はongoing。来年3月に、ついに講義3コマ。学部生とのインタラクションは楽しいけど、卒論・卒研以外の研究活動に直結しないことは優先順位を低くすべきなので、最低ラインの早い見定めが課題。来年度、ティーチングがどれくらい増えるか不明だけど、これまでのところ楽させてもらってるか。その分、研究で頑張らないといかん。

と、1年強でようやくこの国・今の大学に慣れてきた。

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PI業以外の今年を振り返ると、やはり震災が何よりもインパクトがあった。ひとつのイベントでこうも価値観からいろんなことが変わるのかと思い知らされた。3月11日以降、放射線やエネルギー関連情報に対する感度が相当に上がった。エネルギー問題は、人類全体が直面してる問題だし、その意味では、今更ではあっても、問題への関心が高まったのは良いことではあった。とにかく、もう元には戻れないわけだから、ポジティブにとらえていくしかない。

ユーロ問題。2011年はユーロの終わりの始まりとして認識されるのだろうか。遅かれ早かれ、末端の我が身にも実害が及ぶんだろう。すでに被った害?として、ポンドは対円で10円前後安くなったから、給料が相対的に少なくなった。。。

心配なのは今後3~10年の研究費の問題。こういう状況だと、winner-take-all的なことが加速しかねないので、如何に生き延びるか、もっと考えて行動しないといけない。とりあえずHorizon2020の案が絵に描いた餅にならないことを祈りたい。

来年は中東、ロシア、アメリカといったUKを取り巻いている不安・不確定要素がどう影響していくんだろう。。。

他の個人的大きな不安要素は、UK移民制度。キャップがホントに設けられたら、ちとシャレにならない。

あと、NYTでも取り上げられてるけど、インフルエンザの問題も今後の大きな不安要素。テロリストが情報を悪用する脅威もあるんだろうけど、簡単な変異で十分だとすると、自然発生のリスクは意外と高いことにならないか。これは震災・原発事故どころではないので、想像したくない、というか想像しても家族を守る対応法が果たしてあるのか。。。

飛行機に乗れなくなるから、車でスコットランド北部に一時避難、は良い選択肢かもしれない(seriously)。

と、自分の力ではどうにもならない部分で、先行き不安が高まる一方な一年だった。

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ここからは、ここ数週間のことについて。

まず、この時期の大学。
23日15時からオフィシャルにはクローズ。それ以降大学へ行く場合、あらかじめペーパーワークをしておかないといけない。大学に着いたら着いたで、セキュリティーに電話する必要がある。30秒程度の電話ではあるが、超面倒くさい。。。

次に、この時期の気候。
この一ヶ月ほど雨が降らなかった日はなかったんでは?というくらい、毎日どこかの時間帯で雨・雨・雨。一方、雪は2回程少し積もったくらいで、今のところ大きなトラブルには見舞われていない。寒いのは寒いけど、寒すぎ、ということはなく、気温的には0-10度のレンジ。日照時間の短さは相変わらずで、8-16時台だけ明るい状態。

昨年と違うのは、風。

3週間前だったか、ハリケーン並の強風が吹き荒れ、大学も閉鎖された。スコットランドのどこかの風車は一基やられたらしい。。。これに象徴されるように、今シーズンの冬、やたら風が強い。うちと隣りを隔てている柵がこの一連の強風によって一部破壊された。。。

この時期のイベントについて。
先々週末の日曜日、お向かいのご夫婦にmulled wine & mince pie partyに招待され、娘たちをつれて参加(嫁さんは体調不良につき参加できず)。近所の人たちに声をかけていたみたいで、大人だけでも20人前後のパーティーだった。参加した人たちは同世代からリタイア組の夫婦までなかなか多様。レッドソックスファンというディヴィッドさんも来ていて、少し話をする。

ちなみに、mulled wineは数杯呑んでもほとんど酔わないので良い。その日、外は寒かったけど、暖炉の暖房がよく効いてて、文字通りアットホームなパーティーだった。

クリスマス・イブは、最近グラスゴーに進出したWhole Foodsでチキン丸焼きを買って食べてみた。やっぱりこういう外人チックなスタイルは一回やれば十分。。。おいしくない。。。

クリスマスプレゼントは、長女はデジカメ、次女はラップトップ。オモチャとはいえ、テクノロジーは安く高度になってる。。嫁さんには、レンジ使用可の湯たんぽ(レンジたんぽ?)。僕は特に無し。。。

The Royal Institutionのクリスマス・レクチャー、今年のテーマは脳。
家族で観てみた。メチャクチャ用意されてて、インスパイアされた。内容は中高生向けだけど、如何にオーディエンスを巻き込み、飽きさせずに情報を伝えるか、形式的な部分でえらくインスパイアされた。6歳の長女でもエンジョイしてた。そんなレクチャーをできるなんて、すごすぎる。。。いわゆるアウトリーチのお手本。

大晦日の今日の予定は、中華スーパーでおせち用食材等を買って、夜はロンドンのカウントダウンをBBCで見る程度。

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最後になりましたが、こんなブログでも、読んでいただいている皆さんにはとても感謝しています。

話題のチャンネルは限られていますが、来年は、読んでメリットがあるようなエントリーも少しは心がけてアップしていけたらと思ってます。

来年もよろしくお願いします。

2011年12月30日

年末の計画立て


ここ数年、この時期は来年の計画立て。

プロジェクトマネージメント系のChromeアプリを少しだけ調べてみた。MultiTaskSmartsheetは良い感じ。後者はメチャクチャ良くできている雰囲気だけど、フリーではないのでNG。やり方が若干ヤクザチックなので要注意。

ということで結局、簡便なアプリは諦め、MS-Project 2010を使うことに(大学がライセンスを持っていた)。インターフェースが直感的で、Ganttチャートそのものさえ知っていれば、1ラボくらいのプロジェクトなら簡単に計画可能。いろんな機能がありそうだから、奥は深そうだけど、とりあえず表面的な使い方だけで良いなら、すぐに使い方を覚えられる。お薦め。

ついでに、to-do-listのChromeアプリも探して、Todo.lyを使い始めることに。タスクを階層化できるし悪くない。数年前まで、この手のソフトは使うというより使われる印象が強かったけど、随分進化してる。

理想的には、プロジェクトマネージメント機能と、to-do-list的なより細かいタスク管理機能がうまい具合融合し、カレンダーとしても使えると、生産性は随分上がる気がする。

MS-Projectはカレンダー表示もできるから、使いこなせば、to-do-listソフトもいらないのかもしれない。MS-Projectは計画がどれくらい予定通り進行中か確認していく上で良い感じ。できれば、Googleさんに、似たようなクラウドベースのアプリを無償提供して欲しい。。。

そんなことより、最も重要なことは、計画が計画で終わらないように働くこと。。。

2011年12月28日

タグで振り返る2011年


deliciousでブックマークを残し始めて4年ほど。ブックマークするのは主にジャーナルのページだけれども、2011というタグを付けたブックマークは現時点で2558件で過去最高。

2011のタグを付けたブックマークの内訳を見てみると、まずジャーナルランキングは
1. Nature (382)
2. Science (338)
3. Journal of Neuroscience (277)
4. Neuron (155)
5. PNAS (147)
6. Nature Neuroscience (124)
7. Cell (91)
8. Curr Biol (68)
9. Nature Methods (61)
10. Journal of Neurophysiology (56)
(括弧内はブックマーク件数)
と、インパクトファクター・論文数・個人の興味を反映している印象。

キーワードのランキングは
1. Oscillation (103)
2. Development (86)
3. CellType (85)
4. Hippocampus (76)
5. Plasticity (71)
6. Japan (70)
7. BrainState (69)
8. Optogenetics (66)
9. Evolution (64)
10. GeneExp (60)
と、一般性の高い言葉が上位を占めつつ、個人的興味のバイアスがかかってる印象。

ちなみに、20位にEarthquake(47)が入っていた。過去61件しかマークしてない中での47件。しかも、2011というタグを付けてないけど今年登録したブックマークも多数あるので、61件の大多数は今年中ということになる。
さらに、Japanというタグは、例年10~20件ほど。
2011, Japan, Earthquakeの3つのタグが付いたエントリーは43件も。2011年が如何に特別な年だったかが伺える。

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こういうタグ情報を使って、ネットワークなどを描いたりしながら、外部記憶を有効利用したいのがこのサービスを利用しはじめたモチベーションだった。が、今年deliciousの母体が変わってしまい、現在極めて使いづらい状況。そもそもタグ情報全体を正確に取り出せない。。。

もう時代遅れのやり方になってるのかもしれない。。。
他に便利なやり方はないものか。

2011年12月11日

MRCまとめ


MRCグラント申請から結果判定まで。

申請まで
締め切りは6月15日だった。年3回締め切りが設定されている。(ただ、一回rejectを喰らうと一年休み。)

まず、申請書ガイドライン等をしっかり読んで、申請内容を具体的に練り始めた。締め切り2ヶ月前くらいだったか。けど、締め切り直前まで全く筆が進まず。。。さらに、締め切りを1週間後の24日頃だと誤認してたので(アホ)、直前1,2週間で急いで書くはめに。

内容はもちろん、native speakerによる英語チェックすらしてもらう時間を取れなかった。。。予算の事務チェック時、一定額以上のequipment申請には研究所からの許可か何かが必要と指摘され、そのequipmentは断念。。。ぎりぎり15日朝に申請完了。こんなこと絶対してはいけない。。。

ちなみに、提案書のコンテンツは、まずCase for Supportなる申請書のコア部分がreferencesもいれ8ページ。少なめ。予算申請額や、分野外のコミッティーメンバー向けのまとめなどを書く書類が12ページ前後(予算申請部分は、大学のシステムではじき出された数字を入力していくだけといえばそれだけだから、実質、英語文章で埋めるのはその4,5ページ分)。他には、申請額を正当化させる理由書的なもの2ページ、動物実験をする場合はその理由書を1ページ、あとは僕が申請したスキームでは研究所所長の推薦書、といった具合。

一から文章を書くとなるとそれなりに時間はかかる。

フィードバックとレスポンス
申請から4ヵ月後10月21日頃、5人のレフリーからフィードバックをもらう。
そのフィードバックは、
Declaration of Interests
Research Quality
Research Environment and People
Impact
Ethics
Resources Requested
Overall Assessment
という構成。

最後のoverall assessmentは6段階評価。6点が最高。それ以外の項目ではコメントが残されていて、どのレフリーからのフィードバックも2.5ページ前後のボリューム。海外(米国)研究者と思われるレフリーもいた。

ちなみに、僕がもらった5人のoverall assessmentは、5・4・4・3・1点。

良くない。
こりゃダメだな、と正直諦めた。。。

そのフィードバックに対し、3ページ以内で反論する機会が設けられていて、それにはしっかり対応。英語も同僚教授と研究所長にチェックしてもらった。

そのレスポンスレターでは、すべてのレフリーが指摘してきた共通問題に対し図付きで1ページで答えた。残りページを使って、各コメントすべてに答え、特に1点をつけて完全否定してきたレフリーには徹底的(けど感情的にはならず)に反論。

判決(コミッティーミーティング)
レフリーコメント・レスポンスレター・プロポーザルそのものに基づき、11月24・25日(申請から5ヵ月後)、コミッティーミーティングが開催されたもよう。そして、その翌週月曜朝、メールが届いた。

さらに、その翌週フォローアップのメールが届いた。そこでは、コミッティーミーティングでのフィードバック、最終評価(10段階)、そしてどれくらいサポートしてもらえるか大まかに書かれていた。

最終評価は10段階中9で、レスポンスレターが良かった(robust)、と書かれていた。

メールで問い合わせたところ、現在MRCのサーバーがトラブル中で事務処理が遅れているとのことで、年明けに正式契約し、プロジェクトをスタートできるもよう。

感想
レフリーのoverall assessmentそのものは、最終的な結果に直結するわけではなさそう。同僚教授も、無理だ、と思ってたみたいだけど、レスポンスレターでどうレスポンスするかもかなり重要なファクターなのだろう。点数に一喜一憂するより、レフリーのコメントをしっかり解釈するのが重要か。

レスポンスレターの答え方は、基本的には論文のレフリーに答えるのと同じ。論文では、エディターが気に入れば通ることがあると思うけど、それに近いのかもしれない。つまり、コミッティーミーティングの空気が良い方向へ向かえば、レフリーの評価(特にoverall assessment)を引っくり返す事は可能なもよう。コネなんてものは皆無だし、表面的なものではなく、しっかり提案書等の中身を吟味してくれた雰囲気。システムとして、論文の査読以上にしっかりしてる印象を受けた。。。

それから、気になる英語ライティングについて。
申請直後にケアレスミスを見つけたりしたけど、そんな細かいことはどうでも良さそう。日本人的にはありがたい。しゃれた表現なんかより、とにかくメッセージをロジカルに伝えることだけ集中し、極力簡単な英語表現を心がけるのが、とりあえず今の僕のレベルにはあっていそう。

仮説・研究の重要性を説いて、それにどのスキル(preliminary dataも含む)でどういう戦略で臨み、挫折しそうになったらどうするか、そして、何が・どれくらい・なぜ欲しいかしっかりアピールするのが基本でやはり重要なのだろう。

ただ、僕はtoo ambitiousなプランを書きがちなので、その辺をもう少しリーズナブルかつwowと言わせる提案書を如何に書くかが今後の大きな課題。これはpublication listとも相関するだろうから、時間はかかるな。。

それから、今回はPathways to Impactなる、社会との接点をコメントする部分に関しては特にフィードバックがなかった。MRCではそれほど問われないのか、もしかしたら、提案内容そのものにも依存するかもしれない。

気になるsuccess rateは、過去15%前後。来年、もう一つまともな額のグラントを当てたい。

過去の関連エントリーは、こちらこちらこちらこちら

2011年12月3日

朗報とスト


月曜日にMRCから連絡があり、サポートしていただくことになった。ただ、フルではないみたいで、実際どれくらいの規模なのか依然不明。。。けど、ようやくポスドクを雇えそう。めでたい、ありがたい話。

僕のポジションは研究重視のポジションだ、と言われてきて、プレッシャーは感じてたので、学内向けにはとりあえずの結果は残せたことにはなるか。同僚教授も非常に喜んでくれた。次は、外向き。

コラボの方も、運よくグラスゴー内で良い相手が見つかった・見つかりそうなので、攻撃態勢が整いつつある。ここまでの時点で、すでに時間がかかった。。。

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今週のニュースとしては、ストとイラン。ユーロは小休止という感じか。

ストの日、大学における講義を行うという機能は停止した。けど、半数以上の人は通常モードで働いていた。長女の小学校も休みになり、長女はうちで過ごした。小2にストのことをどう説明したら良いのやら、という気もするが、時代なんだろう。。。

新聞によると、多くの人はストをサポートしてるもよう。定年が近かったりすると、カットのダメージは大きいだろうから気持ちは非常によくわかる。取り返す時間がない。

一方で、若い世代は、社会的なサポートをもはや当てにすべきではない。当てにしただけ、裏切られた時のショックが大きい。良い意味でも悪い意味でも、自己責任で生きていく努力をしないといけない。

公的年金という点では、我が家は、アメリカ、UKと国を変え、日本の国民年金も昨年から払うのをやめてるので、公的年金はあてにしたくてももうできない。アメリカで払ったソーシャルセキュリティーは、タックスリターンのように返して欲しい。。。

一方、大学院の時にちょっとした興味で学んだファイナンシャルプランナーの知識(大部分はもはや覚えていないが)はお金のことを考える上で少し役に立っている。5年先すら予測不能といえばそうなので、ファイナンシャルプランは長期になればなるほど絵に描いた餅にはなる。けど、長期目標をまず決めた上で、短中期目標を考えるのは、人生何でも一緒だろうから、悪いことではない。

今の時代、高校生くらいでお金のことをしっかり教えてあげて、それから大学なり社会へ送り出してやった方が良いのだろう。