大学院はアメリカ、欧州、日本??
柳田先生のブログに、大学院は日本か海外かという話題があったので私見を。
あくまで神経科学という狭い分野に限っての意見ではある。
結論から言うと、神経科学に関しては、圧倒的に米国が上。
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日本の大学院、何が一番弱いかと言うと、その教育システム。
日本で学位を取った人は、自分も含め、概して視野が狭い。一方、アメリカで学位を取った人は、視野・知識の幅が広い人が多い。それはDNAとかの差ではなく、単に博士養成法が違う、という環境の差によるところが大きい。
上で神経科学は「狭い」と表現はしたが、とらえ方によっては生命科学より広い。例えば、心理学、経済学、認知科学と強く絡んでいる。工学系の知識もあった方が強い。つまり、独学だけでフォローするにはかなり広い学問分野になっている。
米国の大学院(と言ってもラトガーズ大くらいしか知らんが)は、はじめの数年、授業の負担がとにかく大きい。その分、神経科学を幅広く学べる。そして、後半で各研究室で最先端の研究に専念する。
良い研究室ほど、文字通り世界トップクラスの研究をすることになる。なので、大学院生の期間に、広く、かつ一つのことは徹底的に深く、知識を身につけられる。また、研究室ごとの学生数は日本ほど多くはないから、一人ひとりボスの目が行き届いて、「カスタムメード」されていく。
一方、日本の大学院は、はじめから研究室に所属して研究を進める(場合がほとんどだと思う)。研究室によっては、たくさんいる奴隷の一要員としか扱われない場合もあると聞く。しかも授業料を払いながら。。。
系統だった授業がなければ、視野を広くするには独学に頼らざるを得ない。が、上述のように、神経科学は独学の範疇を超えてきている。
食事、確かに日本がアメリカを圧倒している。が、場所を選べばアメリカでも最低限の食事はできて、治安もかなり良い。
それに、数十年前ならともかく、今の時代、日本人だからといってサイエンスまで日本でやる必要はないわけで(しかも日本では、どんどん若手研究者に対する世間の評価は悪くなっている、ように見える)。
しかも、日本ではポストの数そのものが少ないわけだから、ポストを探す場合、日本以外も視野に入れた方が良いのは多分フェアな考えだと思う。とすると、アメリカなり世界のどこかで生きていく準備は、早く始めた方が、中長期的にはサバイバルできる確率も上がる(たぶん)。
あと、アメリカ人が海外にいかないのは、それはホントにワールドクラスの研究・教育が自国にあるから。PI、ポスドクが世界中から集まってるわけだから、コンテンツが自然と「セリエA」のようなレベルになっている。自国にセリエAがあるのに、優秀な人だったらわざわざJリーグに行こうとは思わない。
日本人が海外へ移る時に考えるであろう心配事の一つは、英語か。
個人的な体験だと、僕は謙遜抜きで、アメリカに来た時はホントにしゃべれんかった。4年半いる今でもまだ多くの問題を抱えているが、それなりのレベルにはなる。特に努力をしなくても(その分苦労はしてきた)。
それに、科学者として生きていくなら、遅かれ早かれ英語のコミュニケーション能力は必要なわけで、逃げてたら、少なくとも神経科学では、世界レベルにはずっとなれない。
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神経科学は、日本の大学院での教育システムが根本的に変わらない限り、アメリカの方が圧倒的に恵まれている。日本は研究者養成の場としては「ベスト」ではない。
欧州も良いはずだけど、個人的に知らないので、アメリカと日本の比較に絞ってみました。もっと日本人(研究人生にコミットする覚悟がある人)は、アメリカか欧州で大学院生生活を送った方が良い、というのが僕の意見です。おそらく今の日本国内ではいろいろ「追い風」は吹いている気がします。
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