2010年5月8日

就活

ようやく正式に次の行き先が決まったので、この1年強(2009年2月~2010年4月)の就活の体験を。

その前にまず、僕の体験よりも絶対参考になる情報を:

まず本として2冊。

HHMIのバイブル本
就活に関しては第一章。

市販の本として
The Chicago Guide to Landing a Job in Academic Biology (amazon.com)
Kindle版
amazon.co.jp経由
この本では、ファカルティーの職探しがメインテーマだけど、前半は学生・ポスドクのポジションを考える上での指南もある。独立職探し、という点では、中盤あたりにあるインタビューの章、後半のネゴシエーションの章は非常に参考になって、何度も読み直した。他にもこの手の良い本があると思う。

他には、日本人の先輩方によるページがあって
長期滞米研究者ネットワークの職探しRyoheiさんのページ、あやしい神経科学者さんのページ(こちらこちら)が非常に勉強になりました。長期滞米研究者ネットワークのMisoさんの情報は非常に詳しくて、インタビュー、ネゴシエーションのイメージトレーニングに非常に役立ちました。

上の情報と、重複したり、冗長な部分たくさんあると思いますが、この手の日本語の情報はいくらあっても多すぎという気はしないので(あと自分自身の体験を記録しておきたいので)、私の個人的体験に基づいた情報・感想等を以下に。

<就活の流れ>
大まかな流れは、
1.公募探し
2.申請書書き&アプライ
3.インタビュー
4.オファー&ネゴシエーション&契約・辞退
というケースが大半だと思うので(いきなり4という場合もある)、以下、各ステップごとに。

1.公募探し
公募情報が掲載されるサイトを定期的にチェックしては、アプライすべき候補を探す。

僕の情報源は、Naturejobs, ScienceCareers, NeuroJobs, あとEUのFENSのサイトもチェックしたりした。日本の職はJREC-IN

Nature jobsでは、検索項目のtabにneuroscienceと入れて検索。
ScienceCareersでは、Neuroscienceというカテゴリーがあってそれをチェックして検索。

ポスドクポジションなども含め、できるだけモレがないようにスクリーニングした。これは毎日の日課に。。。

神経科学系なら、断然お薦めはNeuroJobs。
全く同じ公募が、NaturejobsやScienceCareersに掲載されるより少しだけ早く載ってたし、ほぼ同じコンテンツが掲載されていた。SfNの会員ならタダでアカウントを作れ、神経科学に特化してるし、検索する必要なし。

公募が出る時期は、国によってバラツキがあるけど、やはり秋に大量の公募が出る。日本は少し早くて夏ごろか。ただ、米国以外は不定期に公募が出てたように思う。大抵は翌年夏以降のスタート、という感じか。(アメリカの場合、その辺もっと期間を取れる)

日本版テニュアトラックについて。
例年夏ごろ、その年度に新設される大学が発表されている。その発表を確認した後は、定期的に大学のウェブをチェックした。他には、すでにテニュアトラックが導入されてる大学のウェブもたまに確認してたら、一部、二期的な公募を出す大学もあった。

統計
1年強の期間で、この1次スクリーニングにひっかかったのは、115件。

僕は国を問わずスクリーニングしたけど、日本のポストで1次スクリーニングにひっかかったのは14件。日本にはバイアスがかかっていたはずだからか、引っかかった数としては、米国を除いてトップクラス。ちなみに、米国は70件くらいあって、他を寄せ付けない。

他には、オーストリア、オランダ、カナダ、シンガポール、スイス、ドイツ、ベルギー、ポルトガル、UK、オーストラリア、フランスがひっかかった。

中国、インド、Dubaiでも神経科学系の公募が出てたけど、一次スクリーニングではひっかからなかった。。。が、あと数年もたてば、中国はアメリカに次ぐ主要候補国になる気がする。

ちなみに、1年かけて100件以上の公募を相手にするので、うまく情報を管理しないといけない。
僕の場合、Googleドキュメントのスプレッドシートで情報管理。嫁さんの人生にも関わるので、このスプレッドシートを嫁さんとシェアした。情報シェアはお薦めです。(夕食の会話のネタにもなるし。)

もしも今から就活やり直すなら・・・
公募情報をスプレッドシートなどで管理する場合、いつ締切か、という情報だけでなく、いつ公募が掲載されたか・スタートしたか、という情報も記録しておくと良かったかも?(超マイナー)

2.アプライ
募集要項を「しっかり」読んで、それにそって書類を用意したら、メール、ウェブ上、郵便のいずれかでアプライする。

申請書式は国や公募先によって微妙に違うけど、大まかな提出アイテムは
・カバーレター
・CV(+publication list)
・研究のまとめと将来プラン
・教育方針
・推薦書

カバーレター
どこのどのポジションにアプライしてるのか、自分は研究者としてどんな人物か、将来どんな研究をしたくて、なぜアプライしてるか、といったことを書くもよう。正直、僕は良いカバーレターを書けたとは思わない。。。

CV
僕の場合、学会発表(ファーストのものだけ)も入れた。たぶんカウントされないとは思うけど、量の多さ、というのはnudgeとして働くかもしれないと思った。ただ、in prepの論文は入れなかった。これはネガティブに働くリスクもあると聞いたことがある。論文は、絶対submitted以上を、という方針だった。(*assistant professorなりたての人のウェブを見てたら、in prepの論文を5つくらい載せてる人もいてた。米国地方大の話)。

研究のまとめと将来プラン
研究まとめ、将来プラン、別々に書く場合もあれば、まとめて3ページ以内など、この辺、アメリカ国内でも大学によってかなり違ってた。

1年間かけて、何バージョンも書き直した。正直、どう書くのが正解か最後までわからず。。。

参考になる情報があるとしたら、有名大学のラボのホームページ、特に独立したての人のウェブは、おそらくジョブアプリケーションに近い形でウェブをオープンしているだろう、という読みで参考にした。有名大学の優秀な人たちが如何にうまい文章を書いているか、というお手本を学ぶ上でも非常に勉強になった。

教育方針
アプライした先の1/5~1/4くらいで求められたか。
僕の場合、ガイドブックに載ってるのをほとんど真似た。。。学生のレポートのように。。。教育重視のところは、この辺もしっかり用意しないとダメなのだろう。ちなみに、僕は1ページのものを用意した。が、結局、教育方針を要求されたところからは一つもインタビューに呼ばれなかったから、僕の内容は推して知るべし。。。

推薦書
申請時に推薦書を要求するところもあれば、書類審査をパスした時点で問い合わせがあるケースもあった。その問い合わせは、僕を介する場合、介さない場合、両方あった。大抵は3人分。

僕の場合は、現ボス、元ボス、同じ建物の偉い先生、の3人にお願いした。最終的には、数十件も出してもらうことに。。。(ホントにお世話になりました。。。)

コメント
カバーレターだけマイナーチェンジして、ほぼ同じアイテムを立て続けに送ったケースも多々あったけど、できるだけカスタマイズするよう少しは努力した。

CVは情報がアップデートしない限り変える必要はないけど、見栄えは大事なので、他の人のCVを参考にしながらバージョンを数回変えた。

ちなみに、日本の公募では書式が指定してあるケースがほとんどで、公募先ごとに合わせる必要があった。さすがは事務処理大国。。。元の書式の用意は事務の人たちがやるのだろうから、そういう雑務も仕分け対象にすべき。。。

アプライ方法について、基本的にはメール、ウェブで申請できた。けど、一部の大学は文書を郵送する必要があった。日本の多くで郵送が要求された。。。もし国際公募してるなら、海外のスタンダードに合わせた方が良い。(その点、BSIはいろんな面で国際スタンダードに沿ってたように思う。さすが。)

統計
アプライした件数は68件。
うち日本は8件。他の国はオーストリア、カナダ、シンガポール、スイス、ベルギー、ポルトガル、UK、ドイツ、フランス、米国。数はやはり米国が圧倒的。

一次スクリーニング115件と申請数68件の違いは、あまりにも格上(MITとかロックフェラーとか)、公募内容のズレ、が主な理由で数が減った。70件弱は多い申請数だと思う。

もしやり直すなら・・・
デパートメントのウェブなどから、相手が欲してる人材を徹底的に分析して、できるだけカスタマイズしてアプライした方が良いのだろう。その分時間はかかるだろうけど、インタビューに呼ばれる率もアップするのではないかと思う。


3.インタビュー
アプライ後、最短で1週間(エディトリアルキック?)、大抵は2~3ヶ月でリジェクトの返事が来る。中には半年くらいたって返事がきたり、無視されたまま、いまだに届いたのかどうかすらわからないところもある。

インタビューの知らせは、電話ではなく、メールですべて来た(日本人としてはありがたい)。

僕が呼ばれたインタビューは4つで、すべて国が違ったからか4つとも形式も違った。その4つの国と簡単な形式を。あくまでサンプル数は各国n=1です。。。

日本
期間・・・半日
内容・・・20分のプレゼン+質疑応答

フランス
期間・・・2日
内容・・・20分のプレゼン+質疑応答、フォーマルインタビュー(面接官の質問に答えるいわゆる「面接」)

米国
期間・・・2日
内容・・・1時間のプレゼン+質疑応答、one-on-one meeting、ラボスペース確認、dinner

UK(スコットランド)
期間・・・2日
内容・・・20分のプレゼン+質疑応答、one-on-one meeting、dinner、研究所見学、フォーマルインタビュー

いわゆるチョークトークなるものは体験せずじまいだった。

もう少しだけ詳しく:

日本 
日本国内の他のところはどうかわからないけど、呼んで頂いたところでは、事務の方とスケジュール調整する際、ファカルティーの先生方と個別にお話しする時間を作ってもらえないかお願いした。が、適わなかった。。。大学施設の見学すらできなかったので、将来どんな感じでラボを持つのか、明確なイメージをもてないままインタビューが終わってしまった。。。

ちなみに、僕が呼ばれたところは一度にたくさんのポストが用意されてもよう。が、海外からだったから日程的なものも関係していたのか、僕単独のインタビューだった。

このインタビューの直後にアップしたエントリーはこちら

フランス 
呼ばれた研究所はフランス国内でも異質だと思うので、フランス全体がどうかはわからない。この研究所の場合、一時書類審査をパスしたら、10ページの申請書をインタビュー前に提出する必要があった。

また、新しい研究所だったので、僕のようなジュニアから、引退前のようなシニアな人まで20人くらいが一斉に呼ばれてトーク&フォーマルインタビューを2日間でこなした。オーディション、と呼ばれていた。まさにそんな感じだった。

実際の様子はこちら

米国 
ウワサ通りのインテンスなインタビュー。トークが大事なのはもちろんだけど、one-on-one meetingもかなり重要なのではないか、という気がした。ちなみに、交通費から宿泊費まであらゆる費用を負担してくれた。3人候補者が月一でインタビューをこなしたので、インタビュー期間は2ヶ月以上にも及んだ。

インタビューの詳細はこちら

UK 
イングランド出身のボスによると、インタビューの形式は大学によっていろいろらしい(電話会議的なものだけのものもあったとか)。

僕が呼ばれたところの形式はとても洗練されたインタビューだと思った。5人の候補者が同時に呼ばれ、平行してスケジュールをこなし、インタビュー2日目には決定が下され、その日のうちに連絡が来た。

インタビューの詳細はこちら

その他
他に推薦書の依頼があったところ(一次書類審査パス?)が一つカナダの大学であったけど、インタビューには呼んでもらえなかった(知り合いが呼ばれてた)。

コメント
トークに関しては、
The Presentation Secrets of Steve Jobs: How to Be Insanely Great in Front of Any Audience (amazon.com)
Kindle版
amazon.co.jpのリンク
という本が、僕にとってのバイブルになった。もちろん、スティーブ・ジョブのようなトークは目指せないけど、彼のトークのノウハウはおそらく普遍的なものだと思うし、多くの科学者はこの辺しっかり教育を受けていない。なので、ブレーンストーミングとしても良い本だし、実際この本に書いてあることをできるだけ実践して、それなりの手ごたえは感じたから、自信を持って薦められる一冊。ちなみに、本質的な部分は、上で紹介したHHMIの本にも簡潔にまとめてある。そこにしっかり実践すれば良いと言えばそう。

こちらのエントリーでも少し紹介済み。

one-on-one meetingは、かなりやっかい。会う人の研究を少し予習していくのはもちろんだけれども、もう少し広い文脈・ジョブインタビューという文脈でいろいろ会話をしないといけない。英語が得意でない(できない)僕としては相手によっては結構大変だったし、うまくいったとは言いがたい。

フォーマルインタビューは、フランスとスコットランドで経験したけど、ある程度重複する質問もあったので、しっかり準備して臨めば乗り切れる気もする。ただ、緊張はする。。。

dinnerが最も苦痛だった。どれくらい重要な時間帯かサーチコミッティーになってみないとわからないけど、研究以外の人間的な部分を丸裸にされるので、英語ができないとホントにしんどい。。。

あと、数少ないチャンスをものにしないといけないから、一回目のインタビューの経験をしっかりフィードバックして、同じ過ちは二度と犯さないようにしないといけない。ある意味、実験と同じ。

やり直すなら・・・
ラボをすぐスタートすることを前提に、聞くべき質問などを考えておくと良かったなぁ、と今さらながら思う。つまりは、具体的にどんな形でラボをスタートしたいのか、かなり細かいところまでイメージしておいた方が良かったということ。

というのは、ラボスペースの見学なんかもあるけど、ネゴシエーションのフェーズに入った時に、細かい部分を覚えていなくて、見たはずのものを問いなおしたり、イメージが薄れた状態でラボをイメージしないといけなかったりして後悔した。

つまりは、インタビューの次の日からラボをスタートするぞ、というホントに「レディー」の状態でインタビューに臨むべきだった。ラボをスタートするために何を知っておくべきか、細かいところまでしっかり考えてインタビューに臨んだ方が良かったかも。

おそらく、その辺は先輩でもある相手に伝わるだろうから、他の候補者との差につながっていく気もしないでもない。(あくまで私見なので鵜呑みはNG)

4.ネゴシエーション
時間のかかるアプリケーション、緊張のインタビューをうまく乗り切れると、良い知らせが来る(かも?)。が、その後のネゴシエーションなるものがこれまたやっかいな代物。。。ネゴシエーションの対象は、
・給料
・スタートアップ資金
・スペース
などなど(テニュアのための条件、引越し代や家購入のサポートなどなど)

詳しくは上で紹介した本二冊に詳しい。

給料
僕はあまりネゴろうとは思ってなかったので、提示額をそのまま受入れた。給料がわかれば、手取りも大体わかる。それに基づいて、ファイナンシャルプラン的な簡単なテーブルを作れば、そこでどの程度の人生を送っていけそうか大まかに予想できる。ポスドクよりは多い給料になるから、裕福とはいえなくても、そこそこの生活はできる額は大抵提示してくれる。

周りを見ていると、やはり米国の給料は良いな。。。

スタートアップ資金
米国の常識は他国では通用しない。つまり国によって全然違う。研究を重視しているなら、米国だと500Kドル前後が一つの閾値になる?(米国からオファーもらってないけど、周りを見ていてそんな印象)。

日本の多くのところは、額が公募要領に明示してあるなかなかすごい国。。。

EU圏は国や大学によって千差万別な雰囲気。UKは意外と少なくて、統計は知らないけど、僕の情報ルートから入手した数字は、日本のテニュアトラックより少ない。。。

スペース
これは既存のリソースからのオファーだろうから、どうしようもないケースもあるのだろう。僕の場合、最低限のスペースだけは確保する、ということだけを重要視した。

その他
スタート日はネゴシエーションの対象になるから、いつからスタートするか、いろんなファクターを考慮にいれてオプティマルな日を決めた方が良いのだろう。特に、テニュアトラックの場合、スタートを遅められるなら遅めた方が良いのかも。けど、その分、良い給料をもらえる時期が遅れる、ということにもなる。あと、僕の場合、子供の学校開始時期なども考慮にいれた。

ここから、僕の体験の詳細。

結局、僕がオファーをもらったのは、日本とUKと、なぜかイタリア。

まず時期について。
日本からオファーをもらった時期は、米国の大学の返事待ち時期と重なった。UKからオファーをもらった時期もこれまた米国の結果待ち時期、さらにはイタリアからのオファーをもらった時期と重複があり、正直苦悩した。。。ちなみに日本からオファーを頂いていた時期は、UKとイタリアのそれとは重複なし。(こういうのは、うれしい悲鳴と言うべきなのだろうけど、それぞれに対してしっかり対応したり、そもそもどう対応すべきか考えたりするのにかなりの時間を割くことになって、正直研究どころではなかった。。。)

ネゴシエーションは千差万別だと思うけど、各オファーについて僕の経過を簡単に。

日本
面接から1ヶ月後くらいにメールでインフォーマルな連絡がきた(1月中旬)。
条件面でわからないところだらけだったので、問い合わせのメールを出した。が、一部のしかも重要な質問には明確な返答はなく、単年度制度のため予算を使い切る必要があるので早く結論を、というプレッシャーをかけられた。

埒が明かないので偉い先生に連絡した。できれば、最終的な条件を聞いた上で、米国の返事を待って返事をしたかったけど(そうなると返事は次年度に確実に持ち越しだった)、年度をこえて結論出すのは非現実的だったし、長引かせるのは相手にも迷惑がかかるだろうと思って、辞退を決断。(その時、UKにはインタビューに呼ばれるかどうかすらわかってなかったので、振り出しに戻る可能性大のかなりリスキーな意思決定だった。。。ホントに単年度制度は何とかして欲しい。。。)

この辞退に関連するエントリーがこちら

UK
面接二日目(3/16)の夜にメールでオファーの知らせ(気付いたのは翌日)。ポジションと給料が明示されてた。

数日後(3/23)、スカイプ・カンファレンスをひらいてもらって、条件面などでわからない点を質問。数日後(3/25)、オファーレターがメールに添付されてきた。ただ、そのレターは事務的なオファーという感じで、研究関連(スタートアップ資金、スペースなど)の記述は一切なかった。

その後、スカイプ・カンファレンスのフォローアップという感じで、メールを何度かやり取りしながら、細かい条件面について確認していった。この時点で、気になったのはスタートアップ資金の少なさ。

4月中旬 先方が学会とバケーションの時期に突入し、ネゴシエーションは一時中断。

4月下旬から再開。そして、その再開直前にイタリアから突然のオファーを頂き、結果的にはそれをテコに、オファーの内容を良くしてもらえた(ラッキー!)

5月4日にアクセプトの連絡を入れる。

米国
面接から2ヶ月以上たっても連絡がなかったので(他の候補者の面接スケジュールはあらかじめ知らされていて、2ヶ月強で終わると聞いていた)、メールで問い合わせ。すると、僕はトップ候補者でないことが判明。これで終わりか、と思ったら、「二人を採用する可能性もある」という生殺しの返事をもらう。が、その少し後のメールのニュアンスはそっけなかったので、待つだけ無駄と思って、UKを取った。なので、ネゴシエーション以前の問題。

イタリア
実は、イタリアにはインタビューに呼ばれてもなければ、アプライすらしていない。。。けど、フランスでのオーディションの審査員の一人から突然、ポジションがあるけど興味ないか?というオファーを頂く。その方は、イタリアのスーパースターで、提示条件も悪くなかった。

ただ、嫁さんが子供の教育を最大の理由にイタリアに住むことに難色を示したし、100%満足行くポジションではなかったので、あまり深入りはせず辞退した。でも、スパースターの前でトークしたのがきっかけでポジションのオファーまでもらえるなんて、一生の自慢話になります。

とにかく、人生、何があるかわからんなぁ、とホントに思った。

コメント
ネゴシエーションで、相手がオファーを明示しない場合、どう対応すべきか、腹のさぐりあいみたいな感覚を覚えた。この辺、英語力がないときついなぁと思った。僕の最優先項目は、最低限のスタートアップ資金、だったので、それにはかなりこだわって、我慢強くネゴった。realistic, reasonable, patientである必要があるので、この辺、結構大変。。。

ネゴシーションではメールでやり取りするから、英語力がそれなりに問われる。細かい文法・フレーズに関しては、google検索がメチャクチャ役に立った。

あと、重複するオファーなり、結果待ちとオファーとの選択が非常に悩ましかった。僕の場合、2月上旬から、ホントに悩む日々が続いた。

ボスに相談することもあれば、一般企業に就職する人たち向けのQ&Aフォーラムみたいなウェブサイトを見たり、できるだけ情報を集めて、できるだけ良い意思決定ができるよう心がけた。僕の場合、家族(嫁さん)からのインプットも重要だった。PIの職となると、流動性はこれまでより低くなるから、子供の教育、居住環境など、研究以外のファクターも重要な判断材料になった。

もしやり直すなら・・・
正直やり直したくない。。。

結果的に、相手の期待を裏切る(?)ことになったりするから、精神的に疲れた。そういう世の中なんだろうけど、僕はそういうのは向いてないと思った。

ただ、僕がおかしたミスを挙げるとするなら、オファーをもらったら、他のところにも一応連絡するわけだけれども、UKからのオファーをもらった時にその大学名まで米国側に伝えてしまったことか。

単に「他のところからオファーもらってこれからネゴシエーションスタートします。良かったら、いつ頃結果を教えてもらえるか教えて」的に伝えておけば、相手のuncertaintyを上げれて、もしかしたら、意思決定スピードを速めてくれたかもしれなかった。この辺、駆け引きみたいなものもあるので、一つ一つの連絡が非常に重要になる。

雑感
最後に、就活全体に関して雑感を雑に。

僕が就活を開始したのは1年以上前で、CVという点では、正直どんなに過大評価してもPIのレベルではなかった。今の僕のCVでも、人によっては就活を躊躇する人もいると思う。けど、僕はできるだけ早く独立して、自分の研究をしたいと単純に思っていたし、ちょうどボスの移籍話が持ち上がって、ラボ閉鎖の時限爆弾がスタートしたので、良い意味で背中を押してくれた。

当初、大不況の煽りで、氷河期と聞いていた。
なので、今年は一つでもインタビューに呼ばれれば良いか、その経験をいかして2年目で本格勝負、と当初は思っていた。けど、周りで就活をはじめた人はことごとくオファーをゲットしてたので、いうほど厳しくはないもよう。

あと、今思うに、就活は一度やり始めたら絶対一年で決めた方が良い。就活にエネルギーを注ぐ分、肝心の研究の生産性は著しく低下するから、それを2年も続けよう、と当初から思うのはbad ideaだと思う。

就活の戦略に関して。
もし強いCVを持ってる人は、数を絞って、ピンポイントでアプライしていった方が効率的だと思う。そういうエリートコースの人なら10個くらいに絞って探した方が良い。研究の効率もキープできそう。けど、そうでない場合、あまり後先考えずにできるだけたくさんアプライして、オファーもらってから考える、くらいで良いと思う(余程行ける・行きたい国に制限がある場合は別)。

ある意味、就活は実験みたいなものだから、当初の仮説なんて簡単に覆される。。。結果的には、意外なところで評価してくれるところが見つかったり、良い「出会い」が待っていたりもする。ウェブなどで調べられる情報といってもやはり限りがあるから、バイアスなし、という戦略はニッチを探し当てるという意味では悪くないと思う。

それから、ジョブを探す時、ポスドクでもそうだと思うけど、自分の強み・ウリは何かをしっかり自覚しておかないとダメだと痛感した。結局、他のコンペティターと勝負する時、相手に何をオファーできるか、それをできるだけクリアに売り込まないといけない。CVがどうレベルだったら、あとは「営業」が勝負なんだと思うから。

例えば、日本人的な謙虚さで、Aさんはすごいです、とか相手を立ててるようだと絶対ジョブはゲットできない。もちろん、相手の足を引っ張る・悪口を言うようなことは人間的に問題だからどこの国だろうと問題外だけど、近い将来一緒に働く人間として、とにかく自分を売り込まないといけない。

だから相手がどんな人材を欲しているか分析して、自分のバックグランドとのリンクを見つける必要がある。ここでも、如何にニッチを探し当てるか、というのがこの厳しい生存競争の中では重要なんだと思う。インタビューを経験していきながら、そう強く思うようになっていった。

ところで、今回の就活を通して日本のテニュアトラック制度がどんなものか少しだけ理解が深まったけど、海外で独立することが気にならない人はアメリカか他の国の有名大学・研究所で勝負を挑むべきだと思う。もちろん、日本は研究環境という点で、日本国内で言われているほど悪い国だとは思わないけど、他に良い国、良い研究環境があるのは確かだから、そういう良い環境を追い求めるのは研究者としては自然なことだと思う。日本のため!、なんてちっぽけなこと言ってないで、日本人も含めた人類のために自分の好奇心・情熱を燃やす、みたいな大義名分を打ち立てれば、国境・国籍はあまり関係ない気がする。

そんな偉そうなこともは言ってはみたけど、この就活で、研究だけからは学べないいろんなことを学んで体験できたのは確かです。

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